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福岡で見たのは、糸原健斗の集中力【3/20 対ホークス戦●】

この日の試合と前日の試合。どちらも1塁側の席を取った。周りはホークスファンでいっぱいだけど、3塁側に構えるタイガースベンチの様子がよく分かる。ネクストバッターズサークルから出てくる選手の表情がよく見える。

バットを数回振って颯爽と打席に向かう糸原健斗。その姿がより一層頼もしく見えるようになったのは、昨シーズンの中盤くらいからだろうか。
代打に専念する前は内野のレギュラー格として年間100本以上のヒットを積み重ねてきた糸原。そんな選手が代打に専念することが一体どれくらい難しいか、僕には想像もつかない。
出番が来るタイミングも直前まで分からない。スタメンと違って相対する投手が直前で代わることもある。ほとんどの場合、対戦する投手は1イニングを全力で抑えにくる中継ぎだ。スタメンで出ている選手でさえ、ヒットを打つことは簡単ではない。

この日糸原が対戦したのは、ホークスのR.オスナ。ホークスの絶対的クローザーだ。1イニングあたりに出す走者の数を表すWHIPの数字は0.69。重圧のかかるクローザーを務めていながら、この数字は異次元だ。オスナが登場する演出が始まると、PayPayドームのファンは歓声を響かせ、安堵する。球場内に漂うその雰囲気が、彼への信頼度の高さを表している。
だが前日に行われた試合で糸原はオスナからライト前へのヒットを放っている。このヒットでチャンスを広げ、タイガースは同点に追いついた。

鮮やかなヒットから一夜明けて、糸原とオスナの対戦が再び実現した。3点ビハインドの8回裏、バッティンググローブを付け直しながら糸原が打席に向かった。「代打糸原」のアナウンスがドームに響く。もともと人気のある選手だったけれど、代打になってからその声援はより大きくなったように思える。
外寄りの直球を見逃した後の2球目。決して良い当たりではなかったが、転がった打球が1,2塁間をしぶとく抜けていった。レギュラーのときに何度も見てきた糸原の粘っこいヒット。パリーグの選手でさえ、1年間でオスナからヒットを複数放つのは至難の業なはず。そんなピッチャーから2日連続でヒットを放った。

2日間の試合でで観客席から糸原の背中を見ていた。佐藤輝明や大山悠輔に比べると小柄だが、その存在感は劣っていない。うまく言葉にできないけれど、糸原の凄みのようなものを球場で感じ取っていた。

今シーズンもこの男がいる。それだけで安心できるんだ。

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