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ベンチで涙を流す前川右京を見て思ったこと【7/28 対カープ戦○】

7月16日以来のスタメン。6番・ライトで起用された前川右京はカープ投手陣を前に3打席3三振を喫し、試合の途中で交代した。ベンチで戦況を見つめる前川は涙を浮かべ、目は赤く腫れていた。

上手くいかない自分に対して涙を流せるって、なんて純粋で美しいのだろう。

1試合で複数回三振するなんて、色んな試合を見てきたファンからしたら別に大したことではない。相手投手との相性や球審がジャッジするゾーンなど、ちょっとした要因で上手くいかない日だってある。それは長くプロ野球で活躍してきた選手でも起こりえることだ。長いシーズン単位で見たら、別に大したことじゃない。
応援している選手が1試合で3三振したことがあるか、それはいつの試合か、覚えているファンなんてほとんどいないだろう。

でも前川はそのように解釈できなかった。僕はそれでいいと思っている。出来事をどう解釈して、どのように受け止めるか。それは個人の自由だ。上司からみたら大したことのないミスでも新人が深刻に受け止めて落ち込む、そんなことはきっとあちこちの会社で起きている
岡田彰布監督やほかの選手が大したことじゃないと思っていても、前川にとっては大したことではないのだ。

「泣いているくらいなら練習しろ」。
こういう場面でよく聞く意見だけど、この考えはあまり好きじゃない。
だって、そもそも三振して「くそー!」って思いながらすぐ練習できるなら、それは結局その程度の悔しさでしかないってこと。まだ試合が続いているのにもかかわらず周りをはばからずに泣いてしまった。それくらい前川にとってショックな出来事だったのだと想像できる。

前川のことだから誰に言われなくてもまた打てるように練習するだろう。ただ、高校を卒業して即プロ入りした20歳の若者には時間が必要だったのだ。自分の打席で起こった結果と向き合うだけの時間が。結果を受け止めて先に進むための時間が。

いろんな経験をしてきた先輩たちは、自分なりに切り替える方法をいくつも知っている。
だが、前川はまだその方法を自分の中に持っていない。だって、まだプロ入り2年目だ。
いかにも負けん気が強そうな前川が試合中にもかかわらず涙を流した、そのきっかけが1試合3三振だった。僕はそれが嬉しくてたまらないのだ。
だって三振でここまで感情を乱すほどに悔しがれるなんて、伸びしろしかないじゃないか。

自分がやったことで涙を流すほど悔しがった経験をいつしたか、僕はもう思い出せない。どうやら「忘れる」ことで生き延びていく術を身につけたようだ。

僕みたいになるなよ、前川。


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