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medium 霊媒探偵城塚翡翠|感想・レビュー(★2.0)|あるいは誇大なキャッチコピーの罪について

読了したので感想です。

★の数から分かるように辛口なレビュー内容になっていますので、この作品が気に入っている方は読まれないことをオススメします。

読み始める前

本屋に行けば必ずのように平積みされ、目に入るのは『ミステリランキング5冠!』という謳い文句。そして、帯の背には『すべてが、伏線』という○○トリックの存在を暗示させるような、読者への挑戦状とさえ感じさせるような強烈な謳い文句。

まぁ、少しでもミステリを読んでいる人間であれば、これを読まずには居られないと感じるでしょう。

私も以前からずっとこの作品は気になっていたのですが、最近 Twitter で文庫化されたのを知って、この機会に読んでみようと手にとった次第でした。

感想

うーん、正直なところ私には合わなかったです。

ミステリを読んでこんなに低評価をするのはものすごく珍しいことです……それだけ私には微妙に感じましたし、後半はいくらか読み飛ばしてしまいました……たぶん読まれた方はどういうことかご理解頂けると思うのですが。

確かに、ミステリ・ランキング入りするような大胆な試みがされているとは思いましたが、その試みが「騙された!」という痛快な感覚ではなく、「あぁ、そうですか」という覚めた感覚で、正直そこから先の話はどうでもいいやと感じたのが正直なところです。

Amazonレビューでも書かれていますが、”後味が悪い”ミステリ作品に当たると思います。かといって、湊かなえ氏のような深い作品という感じもなく、”イヤミス”に分類するのもためらわれます。

なんと言いますか、”それがやりたかっただけだろ”みたいに感じてしまいました。アイディアとしては面白いけれど、エンタメとしての小説作品としては失敗している、というのが私の感想です。

誇大なキャッチコピーの罪

私がここまで低評価に至ったのは、前述した『すべてが、伏線』という、出版社側の誇大なキャッチコピーの影響も大きいでしょう。

この強烈なコピーは私のようにミステリマニアで無い人間であっても、どれだけの伏線がラストに回収されるのだと期待・推理して読み進めずにはいられないでしょう……もちろん、それが出版社側の(購入してもらうための)狙いでしょうが。

しかし、読み終えてからこのキャッチコピーが適切だったと思う人はおそらく居ないのではないでしょうか。少なくとも私は、この伏線というものが回収されたときに、なんだその程度の話かと心底がっかりしました。

すべてが、伏線』、こんな強烈なキャッチコピーは UNDERTALE くらいの作品にしか通用しないと思います(ゲーム作品の例で申し訳ないですが)。

えぇ、『UNDERTALE』はこのキャッチコピーに耐えうる、とんでもない作品であると私は思っていますよ。

硝子の塔の殺人

誇大なキャッチコピーといえば、『硝子の塔の殺人』も記憶に新しいです。

当作の完成度は、一斉を風靡したわが「新本格」時代のクライマックスであり、フィナーレを感じさせる。今後このフィールドから、これを超える作が現れることはないだろう。

島田荘司

硝子の塔の殺人の帯より

うーん、みんなしてお酒でも飲みながら考えたんでしょうか。

Amazonレビューでも書かれていたりしますが、この無駄に期待を煽るようなキャッチコピーがなければ、この作品の評価は★0.5くらい高まったと思います。

もちろん売るための宣伝文句は必要でしょうが、こういうことを続けていると出版社としての信用を落として、長い目でみればもっと本が売れない状況になるのではないでしょうか。

まぁ、本作については私もかなり楽しめた作品ですので、ミステリ好きには特にオススメしたい1冊です。個人的には★4.5ですかね。

あとがき

なんだか本作の内容についてほとんど触れていないような気もしますが、まぁこんな感想でしたのでご容赦を。

作家は、文章を匠に操って読者の期待や不安をコントロールしようとするわけですが、それを出版社がぶち壊してしまうってのはどうなんだろう、と考えさせられた1冊でした。

―了―


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