しゃべる小学校
「おはようございます」
「おはよう、吉田さん。今日もいい挨拶ですね」
「おはよう!」
「おはよう、沢田くん。今日も元気ですね」
私はそうやって児童たちと挨拶をかわしていた。
*
6年間で卒業してしまう彼らとは一期一会の付き合いに過ぎない。
「はじめまして、皆さん」と入学式。
「どうぞお元気で、皆さん」と卒業式。
それらを繋ぐ喧騒な日々ー
私は幸せな小学校だったろうと思う。
*
しかし長い年月というのは残酷なもので、私を支える骨格は歪み続け、肌もひび割れが目立ってきた。耳もよく聞こえない。
誰も通わなくなった私に大人たちが足を踏み入れる。
「はい、老朽化がー」
「危険でー」
「……」
そんな断片的な声が耳に届く。そろそろ限界というやつなのだろう。
*
しかし、その後の私を待っていたのはリフォームであった。私は博物館として再利用されることになったのだ。
私はいつかの児童との別れの言葉を思い出す。
「絶対にまた会いに来るからね!」
本当に私は幸せものだ。
あとがき
#ショートショートnote杯 の作品で408字でした。
大切なもの、覚えてますか。
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次作:
Special Thanks!
ショートショートnote杯の公式記事の画像で目に付いた「しゃべる」と「小学校」を組み合わせて自由お題のショートショートとさせていただきました。
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