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ぼぎわんが、来る|感想・レビュー|★4.0

映画化もされている『ぼぎわんが、来る』を読了したので軽く感想を書いてみたいと思います。

なお、映画版である『来る』は未視聴です。

作品の概要

本作は『第22回日本ホラー小説大賞』で大賞を受賞した、澤村伊智氏によるデビュー作品で『角川ホラー文庫』から出版されています。

私自身は澤村伊智氏の作品を読むのは、『予言の島』、『邪教の子』から続いて3冊目に当たります。つまり、どちらかというとミステリ方面から著者の作品に入ったという流れです。

感想

さて、私にとっては久しぶりのホラー小説となったのですが、一言で感想を述べるなら「怖かったし、面白かった。さすが角川ホラー」といったところです。

冒頭から世界に引きずり込まれ、続きが気になって読み進めてしまい、結局は一気読みしてしまいました。

本作品には『ぼぎわん』という人知を超えた化け物が登場し、それに呼びかけられても絶対に答えてはいけない、というある意味では王道的あるいは古典的な設定のホラーとも言えるのですが、それでも十分に怖いと感じさせる文章力はすごいと思いました。

本作品は3章構成となっているのですが、とくに1章の怖さは秀逸だと感じました。1章を読み始めたら、多くの人が1章の終わりまで一気読みしてしまうのではないでしょうか。

一方で、Amazonレビューにも見受けられるように、後半の2・3章はやや失速感があるようにも感じられました。1章に対する謎解きのような側面もあるので、ある程度は仕方ないとは思うのですが。

おそらく多くの人の賛否が分かれるのは、後半におけるラノベっぽさかと思います。

1章は貴志祐介氏の『黒い家』を思い起こさせるほどに、現実世界の延長のようなホラー感があったにも関わらず、後半となる3章ではラノベのようなライトな世界観を感じさせる内容になっています。

私はライトミステリもわりと好きで、ライトな世界観でも容認できるタイプなのですが、読み進めている中で”舞台が突然変わってしまった”ように感じてしまい、違和感を覚えずにはいられませんでした。1章からそういう舞台であると読者に認識させられていれば問題なかったと思うのですが……。

このあたりについては、爪毛さんが興味深い記事を書かれていましたので、気になる方は読んでみると面白いかもしれません。

 登場人物や展開に対して「こうは動かないだろう」「こうは考えないだろう」「こうはならないだろう」と違和感を覚えると途端に冷めてしまいます。

……

 億を超えるぶっ飛んだ値段の食べ物があってもいいのです。ただし、金持ちがそれを納得できる理由なく買うのはちょっと違和感を覚えます。いくら金持ちでもそんなお金の使い方するかなと。お金の価値を知らない人だったらまだしも……と考えていると物語の途中で冷めてしまうのです。しかし、それにちゃんと理由があれば、ぶっ飛んだ理由であったとしても、そういう世界なんだと感じさせてくれる何かがあればそれでいいのです。

しかしながら総合的に考えると、本作は面白いホラー小説だったというのが私の最終的な感想です。

『ぼぎわん』という人知を超えた存在に対する恐怖に加え、人間の怖さがよく描かれているのが、私のホラー作品に対する好みと合致したように思います。

このあたりは『黒い家』にも通じるものがある気がします。

エンタメ性も高い作品だと思うので、”気軽にホラー作品を読みたい”という方にはぴったりかもしれません。

ー了ー

あとがき

最近はショートショートばかり読んでいたのですが、長編小説も面白いものだとあらためて感じました。やはり物語の世界にどっぷりと浸るためには、中編・長編などのある程度の分量が必要なのだろうと思ったりします。

そして、作家あるあるなのだと思いますが、ホラー作品を読むとやはりホラーを書きたくなってしまいますね(笑)

最近はショートショートや短編ばかり書いていましたが、長編小説にも挑戦してみたいところですね。

まぁ、最長でも2万文字程度しか書いたことがないので、長編小説が書けるかは分かりませんが。


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