恥ずかしがり屋の立方体 #3|#毎週ショートショートnote
「さぁ皆様!とくとご覧あれ!」
男はそう言って、テーブルの上に伏せられた黒いコップを持ち上げた。
そこから現れたのは1つのダイス。弐の目を上にしている。
男はやれやれという表情でダイスに向かって声を掛ける。
「ここは壱になる場面だろ?」
男は生まれつきダイスと会話ができた。不思議なことだが。
「だって……」
「ん、なんだって?」
「恥ずかしい……から」
「そうか」
男はその感覚を理解することはできなかったが、その気持ちを理解することはできた。
「ねぇ、どうして私みたいなダイスを選んだの?」
男は逡巡した後、セラーからワインを取り出し、それをグラスに注ぎながら答えた。
「気に入ったからさ」
「え?」
「その赤い目がさ。それじゃダメか?」
男が亡くなったのはそれから2週間後だった。
その後、ダイスは巡り巡ってカジノで使用されていた。噂によれば――そのダイスは壱の目が出やすいらしい。
鈍い赤色を放つ壱の目は、今日もカジノの観客を熱くさせていた。
あとがき
物事の一面だけを見る……それは果たしていけないことでしょうか。
Special Thanks!
たらはかにさんの企画に参加させて頂きました。
前回書いたやつ
この記事が参加している募集
役に立った記事などありましたらサポート頂けると嬉しいです。