あとがき・雑記|ある山岳地帯での話

著者による、あとがき・雑記です。

あとがき

やはり私はあとがきというやつが好きなようで、最近はむしろあとがきを書きたいがために、本編を書いているのではないかという、一種の倒錯した状態に陥っている気がしなくもありませんが、それで何か問題があるのかと聞かれれば、実のところ何一つ困ってはおらず、むしろそれで創作意欲が掻き立てられるのであれば、それはむしろ望ましい状態ではないかという気もしてきており、これは世の作家も真似するべきではないかという、おそらくはおよそ現実と乖離した妄想が頭をよぎります。

さて、何の話をしようとしていたのでしょうか。

そう、あとがきです。

なんとなく察しがついている方も多いかもしれませんが、ここ2ヶ月くらい体調をかつて無いほどに崩していまして。アマチュア作家はおろか、人生まで引退する勢いだったような気がしなくもありませんが、まぁなんだかんだで生存しています。はい。

おそらく、もうしばらくは、他の方の作品には目を通さない状態が続くかもしれませんが、それでもよければ引き続きお付き合いくださいませ。

さて、『ある山岳地帯での話』です。

久しぶりに短編小説でも書いてみようという気分になったので、以前に書いていた小説ネタ的なメモを読み返したら、以下のようなアイディアが書いてありました。

なるほど、熊よけの鈴が、もしかしたら熊にとっては不快なものかもしれない……そんな寓話的な話を書こうとしていたようです。オチもつまりはそういうことですね。

しかし、と思い出します。

そう、これはショートショートとしてはどうにもオチが弱いですし、短編小説としての分量を割いて語るほどのアイディアではない、と半ばボツにしていたものでした。うーん、悩ましいです。

しかし、私は宮内悠介氏の作品から学んでいます。

淡々と語られる起伏の少ない物語であっても、文章の書きかた次第で、どんどんと読み進めてしまう作品を書くことができる、と。いや、私に氏のような才能はありませんが。

そんなわけで、純文学というわけではありませんが、心を大きく動かすのではなく、極めて淡々とした文章を並び立てて、それでも最後まで読んで「物語を楽しんだな」という読了感が得られるものを目指してみました、Wikipediaの記事みたいな。

で、書き上げたのは良いのですが、これが果たして、面白いのか、面白くないのか、自分で全然判断がつかなかったんですよね。

普段、エンタメ的な作品を書くときは、(多かれ少なかれ)どうやって読者の心を振り回すかという視点があります。もちろん本作にも無いわけではないのですが、非常に淡々と進行しているため、心の揺れ幅が非常に少なく、自分の意図したとおりに動くのか確信を持てなかったのです。

実際に面白かったかどうかは分かりませんが、それなりの分量でこの堅い文章にも関わらず、(おそらくは)最後まで読んでくださった方もいたようで、大変嬉しく思います。

うーん、これあとがきなんでしょうか。

単なる自分語りのような気がしなくもありませんが、あとがきで自分語りをしてはいけないルールというものも存在しませんし、こんな雑な文章であっても何かしら得る人が居るかもしれません。それが教訓なのか反面教師なのかはさておき。

気が向いたら、また短編小説を仕上げ、あとがきという名の自分語りを思う存分したいものです。

それでは。

―了―

P.S.

立山黒部アルペンルートは、実際に素晴らしい景観の場所ですので、自然が好きな方はぜひ一度訪れてほしいと思います。

不思議な音を耳にすることが無いことを祈っております。


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