「こんにちは」 「こんにちは」 「久しぶりです」 「久しぶりです」 「元気そう!」 男、タバコを咥える。 「元気そうだね」 女、男を一瞥し、手元に視線を戻す。 「はい。 元気です。 プロポーズされました」 「えぇ!」 「そうなんです」 「えーそうなんだ」 「そうなんです」 「へぇ」 男、酒を飲む。 それに続き、女、酒を飲む。 「うん まぁ、 嘘なんですけど」 「あ、嘘なんだ」 「はい。嘘なんですけど、 2歳年上の人で」 男、女を見る。 「嘘だけど?」
私の脳の遥か遠くに揺蕩うひとひらは 花弁かもしれないし ちり紙かもしれない ずっと そこで揺蕩い続けてくれ それだけでただ美しい むせかえるような芍薬の香りに思う
僕がもしその本の1ページを破いて丸めて ポケットに入れてずっと持っていたとしたら 彼女は僕が持っていることを 許してくれるのだろうか もしかしたら 探してくれたりしないだろうか
昨日、夜、夢を見た。 眠ってしまった覚えはない。九月に入り、気持ちのいい風が吹いていたから、クーラーを付けずに窓を開けた夜だった。寝床に入って、息を吐き、窓辺を見た。それから、あぁ、そこに今年買えなかった風鈴があればなと思った記憶がある。透明なガラスに、青いペイント。か細くても耳に通る音がキラキラと鳴る小さめのものが理想。 去年持っていたものだ。綺麗な風鈴だった。イベントで使って、家に持って帰って、自分のものになるはずだったのに、割れた。物自体がないということよ