マガジンのカバー画像

ももたろさん。 ーmaterialー

18
我が子の家です(違う)#創作
運営しているクリエイター

2015年8月の記事一覧

ある保安隊員とある元男子高校生の話

「『あそこにいいケツしてる子がいる』って言って、許される男と許されない男の違いってなんなんだろうね」
「…どうしたんですか突然」
「安心しろ通常運転だ無視しろ」
「ひどいよお前さん〜たまにはくだらない話のってよ」
「くだらないって分かってんのかよ」
「くだらないけど気にならない?」
「まぁ確かに気になりますね」
「広げんな…」
「でしょー?違いってなんなんだろうね」
「やっぱりイケメンかそうじゃな

もっとみる

ある双子の兄の話

「これで撃て」
そいつらはひどく訛っていた。よくドラマや映画で見るような銃を渡された。詳しい名前は分からない。
「倫、だめ、撃たないで!!」
弟の泣き叫ぶ声がガンガン頭に響く。撃たないで殺されるのはお前だろ、分かってるのか。俺が撃たなければ…
「早く撃て、撃ちなさい」
父の声がズンと重く響く。父は落ち着いていた。隣にいる母も同じだった。
父と母の最期の願いを聞くか、弟の最期の願いを聞くか。ここ

もっとみる

ある近衛隊員とある元男子高校生の話

「あんたも来るのか」
「ええ、行きますよ」
侑人はバオの隣に立った。
「18禁見たことあるか?…グロい方だ」
品定めをするように、侑人をじっと見る。
「18禁の映画は見たことありませんけど、18禁の現場ならいくらでも」
「ほう?頼もしい」
バオはニヤッと笑った。おもしろいものを見つけた、と言い出しそうな笑顔だと思った。
「死ぬのは怖いか?」
「いや…死んだ方がもしかしたら、会いたい人に早く会えるか

もっとみる

ある保安隊員の話

シャワーを浴びるために服を脱いでいた。暑くて汗をかいたせいか、防弾ベストが肌にくっついて脱ぎにくかった。
「お前さんさ」
しづるは壁にもたれながら話しかけてきた。
「もし俺が裏切ったらどうする?」
変なこと聞いてくる奴だ。
「それは『俺を』?『国を』?」
「んー…『国を』だね」
こいつはタイミングってものを考えないのか。
「てめぇの口に拳銃突っ込んで脳幹ぶち抜いてやる。俺のもんだと思って噛みしめて

もっとみる

ある軍学校生の話

「いよいよだな」
「おう、いよいよだ」
俺達はそれぞれの詰所に配属されて、保安隊としてこれから生きていくことになる。
「お前さ、都市のほうに出ていくのかと思ってたよ」
「えっなんで」
「確実にあっちのほうが情報量多いだろ?だから元の世界に戻る方法とか、見つかる確率はゼロじゃない。探しに行くのかと思ってたよ」
真顔で言う。驚いた。まだ覚えてたってことは、こいつ本当にあの話信じてたのか。ごめん、「俺は

もっとみる

ある保安隊員とある元男子高校生の話

「お前さんなんで保安隊に入ったんだい?」
突然発した問いに、侑人はえっ、と小さく洩らした。こんなことを聞かれるとは思っていなかったらしい。
「いや、ちょっと聞きたくなってね」
「保安隊に入った理由、ですか」
彼は質問を確かめて俺から視線を逸らし、空中を見つめた。それが彼の考えるときの癖であると、この前はじめて知った。
「最初、千堂さんや仙崎さんにお世話になって…病院や児童養護施設の方々にも、すごく

もっとみる