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15夜 どこでも人手不足なのに・・・

 巷では,運送業界の2024年問題とか教員の定額働かせ問題とか,過去最高収益を上げる大手企業が多いなか,私たち庶民を取り巻く話題はなんとも先行きの暗い話題ばかりがネットを騒がせているように感じる.
 運送業界の話題にしても教員のブラック問題にしても,給与を上げることを課題解決のメインに据えているようなのだが,そもそも生産年齢人口が減っているところで,多少の給与アップでは解決には至ることがないということは,自明の理だろう.以前,この問題の解決方法として外国人労働者をとるかロボットをとるかという事を話題にしたが,時間軸を考えれば,両方で対処しないと立ち行かなくなるに違いない.しかし,今や日本の給与水準は世界的にもかなり順位を落としているところで,果たして希望するスキルを備えた外国人労働者は来てくれる見込みはあまりないように感じる.
 では,ロボットはどうなのだろうか.2021年に国際ロボット連盟(IFR)が報告した「ロボット・レース 世界の自動化トップ10カ国(Robot Race:The World’s Top 10 automated countries)」によれば,我が国は,2020年時点で世界のロボット製造の47%を占めているらしい.労働者1万人当たりのロボットの数もシンガポール(918台),韓国(868台)についで第3位(364台)とのことで,生産現場におけるロボットの導入はかなり進んでいるのではあるけれど,それでも人手不足は否めない.要するにロボットや自動化の導入が進んでいない業種における人手不足の問題が重要なのである.
 多くの業種で,定年延長以前から再雇用制度による高齢者の労働市場参加が状態となりつつある現在,多くの労働者は定年前の給与より4割くらいは低い給与水準で働いているのが実情だろう.これも一種の「やりがい搾取」なのだろうが,政府がどれだけリスキリングと叫んだところで,60歳を超えた者が,これまで働いてきた業界とは異なる業界に転職することは極めて難しいのが一般的だろう.いまだにこの国の多くの企業は,その人が持つスキルやパーソナリティを採用の中心には置いていないということだ.だから,定年後に再雇用された方(もちろん,それを望む者もいるだろう.)が,新たなスキルを身に付けて転職するなどという手段にでるよりは,よほど面倒がないということになる.今後,高齢者ばかりになっていくこの国で,一体誰にリスキリングを推奨するのだろうか?
 おそらく,運送業界の2024年問題も教員の希望者不足の問題も解決に向かうことなく,なんらかの形で撤退戦になるだろう.運送業は「翌日配達は無理になりました.」とか「そこへは運べません.」といえばいいわけだが(勿論、困った事にはなるが,結論としてはそうすることで納得する以外にはないだろう.そこに働く人や業界は悪いわけではないのだから.),学校の場合は,「単位認定出来ません.」とか「期限までに履修を終えられません.」という問題になり,このことは,ひとつの学校の問題ではすまなくなる.ひょっとして,幾つかの県で始まっている「教員免許がない人の特別枠採用」などという,もはや「教員免許更新講習」はいったい何だったのかと言いたくなるような手段のように,「自習したのちに簡単なテストをクリアしたら履修OK」などという学習指導要領はどこへやらという手段で解決を図ろうとするのかもしれない.
 どの業界でも同様の危機はやってくる。
手詰まりになる前に,少しはマシな解決方法を政府に提示してもらいたいものだが,どこも「やりがい搾取」で何とかなると考えている節があるように思えてしかたない.映画ではないが「問題は現場で起こっているんだ.」

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