娘が、友達からイデコが良いよって

佐久川ダイカストという部品の製作所を経営している佐久川正二郎さんのお宅で、毎月の貯金の集金に伺ったとき、奥さんの昭子さんから相談があった。

毎月の定期積金は、ご夫婦それぞれのお名前、一人娘の理恵さんのお名前の3口を作ってもらっていた。

娘さんが近所の勤めを退職し、都内に働きだしたため、娘さんを心配して貯金の口数を増やそうと考えているそうだ。

前々から家に食費として3万円を入れていて、それを奥さんが農協の積立てに充てていたんだけれど、それとは別に、お母さんの財布からいくらか出して、もう一口、積み立てをするつもりだったらしい。最初は。

そうしたら、娘さんが職場の友達から個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)を

「絶対やった方が良いよ!」

と勧められ、娘さんが迷っているらしい。


僕は内心で

「iDeCoは年収が相当高くないとデメリットが目立つんだけどなぁ」

と思った。

でも、まったく無駄なものでもないし、年収が想像以上に高いかもしれない。

それに、今、会話しているのはご本人ではなく、お母さんの昭子さんだ。

こういう時は、よっぽど明確に悪い物と説明できる根拠でもない限り、否定しても肯定してもお客さんの捉え方次第になってしまう。

だから、否定も肯定もせず、「共感」をすることにした。

「そうですね、iDeCoは私も勉強不足でわからなくて、お答えできなくて申し訳ありませんが、農協としては、積み立てをやっていただけたら、元本は減りませんし、毎月必ず集金に来てしまいますので、自然と貯まっていくので、ぜひお勧めしたいですね」

すると、昭子さんは笑顔で

「そうよねぇ、まぁ、娘も、あんまりiDeCoをやる気は無さそうだったけど」

と、ご自分の中で考えをまとめていた。

「もし、積み立てをご利用いただけることになりましたら、いつでも呼んでください!飛んできますので!!」

明るく笑って会話を済ませ、佐久川さんのお宅を後にした。


後から少し後悔したのは、JA共済の個人年金保険、予定利率変動型年金共済のリーフフレットがカバンに入っていたら・・・ということ。

iDeCoは掛け金の全額が所得控除にはなるけれど、将来的に手数料の無料が廃止された場合、利息より費用が多く掛かるリスクがある。

しかも、運用次第で元本割れ(掛けた分が返ってこない)リスクもある。

娘の理恵さんは30歳くらいで、60歳まで下ろせない事もマイナス面だ。

JA共済の予定利率変動型年金共済なら、年間で8万円を掛ければいい。

所得控除は半額の4万円。

10年を越えれば、途中解約して元本が割れない。

6年目から1%を超える運用利回りが期待できるし、最低保証利率が0.75%あるから、iDeCoを始めるよりも先に作ることをおすすめできる。

あ、でも個人年金保険料控除を、他の生命保険会社で使っていたら意味がないか。

ダメもとでも、あの場でリーフレットをお渡しできていれば理想だったなぁ。

時間は戻せない。もしも、次に同じ様な場面になった時のための、将来の教訓にしておこう。

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