非常停止ボタンの手触り
先日、生まれてはじめて電車の非常停止ボタンを押した。大学からの帰り路、下り線の発車を待っていたときのことだ。
私は座って本が読みたかったので、次の電車を待つことにして、ホームの中程でぼうっと立っていた。ホームにいたのは私ともうひとり、スーツ姿の男性だけだった。電車の発車を知らせる構内アナウンスとおきまりのメロディが流れはじめ、さてそろそろ出発するぞ、という段になって、眼の前で電車に乗り込もうとする姿があった。その女性は白杖をついていた。閉まりかけるドアが見えていなかったのだ