#29-T 法治国家?

久々なのに科学とほぼ関係ない内容。
このニュース、法治国家だから仕方ないという意見もありますが、この情報だけから行くと、無罪の理由は「少年はもともとビルに入ったことがなく、6階より上に逃げ場がないと認識していたとはいえない」

突然ですが、ベイズ統計という統計手法があります。その特徴は、新しいデータを取り込みながら推定や予測の精度を高めていくというものです。
例えば中がみえないパーティションで囲われた部屋に人がいるけど、男性か女性かわからない、それを推測したいというような状況を考えてみてください。最初は人がいる、という手がかりしかないので男女の可能性は50%ずつです(最近のLDBT的な話はおいといて、生物学的な男女性の2択のみとします;インターセックスなども除外します)。
50%では推測できません。声をかけるとかはなしだとすると、どうしましょう。よくみると、入り口に傘がおいてあります。ピンクのふりふりがついています。これも今は多様性の話はおいておいて、ピンクのふりふりの傘をさす可能性が高いのは女性でしょう。これで女性の確率は70%くらいになりました(数値は適当です;100%でないのは、他の人の傘である可能性もあるからです)。
ほかにも、ハイヒールが置いてあります。その部屋は土足禁止なので、おそらく中にいる人のものでしょう。女性の確率90%です。
そうこうしているうちに中から女性がでてきました。90%で女性と予想していたので、推測は当たりということになります。

このように、ヒトはある事柄の蓋然性(ある事柄が起こる確実性や、ある事柄が真実として認められる確実性の度合い)を新しいデータや情報(傘とか靴)によって考えます。これを数式で表現し、統計に用いているのがベイズ統計です(ざっくりいうと)。
このようなヒトとして自然な考え方に立つと、知らないビルであったとしても、ビルの上層階に逃げ場がある可能性とない可能性、どちらが高いでしょうか。ビルって時点で逃げ場のない可能性50%だとしても、「ビルの上の階」という情報で逃げられない可能性は高まります。しかも大きな広いビルではなく路地裏にあるような雑居ビルということで、逃げ場のない可能性はすごく高いでしょう。

「少年はもともとビルに入ったことがなく、6階より上に逃げ場がないと認識していたとはいえない」、が無罪の主たる根拠だとすると、法治国家だからという理由ではなく、重大な誤りのある判決だと思います。

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