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君たちはどう生きるか

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』を読んだ。
岩波ワイド版というやつ。


叔父さんのノートの一言一言が、胸に迫ったもっと色々教えてくれ、とノートが出てくるのを心待ちにしてしまった。
目新しい教えがあるわけではないのだが、
思わず自分を省みてしまう言々句々だった。
言葉遣いだろうか、なんだろうか。

コペル君が友達との約束を果たせなかったくだりでは、
私自身も経験があり、かつリアルタイムで同じような状況になりかけていたこともあり、
胸が痛くなった。

山本有三が、子どもたちに読ませる本をという思いから生まれた日本少国民文庫、
山本有三の意思を汲んで『君たちはどう生きるか』を書き上げた吉野源三郎。

1937年という戦争だ戦争だの時代、 
分断が進む世相において、
世界とのつながりをコペル君が身近な経験から感じる場面は、吉野源三郎の子どもたちへの願いが込められているような気がした。
叔父さんがそれを生産関係だと丁寧に説明するところも。

吉野源三郎や山本有三以外にも、
人道的な道を模索した人は多くいただろうが、
それとは反対に軍国主義に向かってしまったことに違和感があるし、思想統制の恐ろしさを感じる。

吉野源三郎は治安維持法で逮捕されている。

吉野をはじめとした反戦の気運になりうる人物を、犯罪者として扱う。和を乱すと。

思想統制により日本の思想が成熟する機会をみすみす逃してしまったのだと思う。


以下、メモ代わりに抜粋

「英雄とか偉人とかいわれている人々の中で、本当に尊敬が出来るのは、人類の進歩に役立った人だけだ。そして、彼らの非凡な事業のうち、真に値打のあるものは、ただその流れに沿って行われた事業だけだ。」

「君も大人になってゆくと、よい心がけをもっていながら、弱いばかりにその心がけを生かし切れないでいる、小さな善人がどんなに多いかということを、おいおいに知って来るだろう。世間には、悪い人ではないが、弱いばかりに、自分にも他人にも余計な不幸を招いている人が決して少なくない。人類の進歩と結びつかない英雄的精神も空しいが、英雄的な気魄を欠いた善良さも、同じように空しいことが多いのだ。」

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