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全力後退。

なんでも全力を尽くすことが、全力で前進することが、
人として目指すべき姿だと教えられた。


それは時として、壁にぶつかるだろう。

そんな壁をも乗り越えることが成長であり、評価されるのである。

だから、全力を尽くして前進することで、自分の心を前に向かせた。


ところが、思った以上に壁は高かった。

泣いても、いくら己を奮い立たせても、越えることは出来ない。

期待に満たない成果になると悟っていたものの、前進以外の選択肢は許されなかった。

足が折れても。翼が墜ちても。視界が霞んでも。

「みんな同じだ」と教えられた。


だから、壁に背を向けて後退・ ・ ・ ・ ・ ・ ・した。

これなら壁を見ないで済むし、自分がどこまで登ってきたのかよく見渡せる。


人として目指す姿なのかと、疑いながら生きている。

期待に応えるためには、ずっと後ろ向きのままでいることが。

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