短編小説|本の墓場と天才の閃き #1
「全部で5冊ですね、2週間後の10月18日までにご返却をお願いします」
ほとんどの人が無言のまま本を受け取ってその場を立ち去る。他県では自動化が進んでいるとの話も聞くけど、そうなったら私の仕事がなくなってしまう。静かな図書館で平坦な時間が流れる。刺激はないけど、平和な時間を過ごせることは案外幸せなのかも、と最近は思えるようになってきた。
そんな平坦で平和で平凡な仕事だから、ちょっとした変化や違和感にも敏感になる。そう、つい30分ほど前、おかしな来館者がいた。
図書館の本を