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ラジオドラマ脚本2021−4

虎漢「出演、OKしたけど、1時間だけ、吠えるのはなしだぞ!でも、小堀さんなら…」

【SE】発情期のような猫の鳴き声

虎漢「気を緩めると、すぐにこれだよ。気をつけないと。ましてや深夜だから」

【SE】ラジオ番組テーマソングが流れる。

曲名【ビーチボーイズ・素敵じゃないか】

小堀「…どこかにいる君と話がしてみたいんだ。遅すぎるなんてことはない。どこかで会えると信じて…。こんにちは、小堀浩之です」

【SE】(FO)テーマソング流れる

小堀「今日のリスナーさんは、いつも、番組宛にメールをもらってる【RNとらおとこさん】です」
虎漢「あ、はい」
小堀「早速で申し訳ないけど、自己紹介をしてもらってもいいかな?」
虎漢「あっ、は、タイガーの虎に、漢民族の漢で、トラオトコです」
小堀「すみません。こんなご時世なので、リモートでのやり取りをお願いしました」
虎漢「あっ、大丈夫です」
小堀「あれ?ビデオはミュート?」
虎漢「すみません、超ブサイクで…、恥ずかしがりなんです…」
小堀「謙遜しないでよ〜」
虎漢「見ない方が…」

虎漢(M)だってさ、上半身獣なんだよ。今の僕は…。

小堀「そんなことないでしょ、驚くようなブサイクっていうのも、興味あるけどね」
虎漢「中途半端なんですよ、今の形態自体が…」
小堀「携帯電話?」
虎漢「え、なんでも…」
小堀「虎漢さんさあ、毎日メールもらうけどさあ、なんだろう…。違和感があるんだよ」
虎漢「そうですか?変だな…」
小堀「えっ?人と話さないの?」

【SE】発情期のような猫の鳴き声

小堀「どういうこと?人と話すことがないって?やっぱり、covidの影響?」
虎漢「あっ、それです」
小堀「プライドとか…、でもさあ、人は、人の中でしか、生きていけないじゃん」
虎漢「人なら…」

虎漢(M)人じゃなくなってきてるなんて…。

小堀「あっ、わかった!虎漢さんだけに、虎になったとかだったら、すんごいよね」
虎漢「えっ…まさか」
小堀「それが、本当ならさあ、ラジオよりも、テレビの方が映えるよねえ。それこそ、バズっちゃうんじゃないの?」
虎漢「…ただの人嫌いです」
小堀「よかったよ。本当に、虎だったら、僕食べられちゃうかと思ったよ」
虎漢「食べても…」
小堀「えっ?なになに…」
虎漢「…無闇矢鱈と襲わないですよ。人間じゃあるまいし…」
小堀「じゃ、ここで、曲を。アニメのタイガーマスクのテーマ」

【SE】カフを下げる音

小堀(笑)「D、今の聴いた?本当に、俺、食べられちゃうのかな?」


【SE】(FO)曲

小堀「虎漢さん、なんで、人と喋らなくなったのか?教えてくれるかなあ」
虎漢「う〜んっと、なんだろう、プライドが邪魔してたんです。それと、他人の雑音に対して過剰に反応する自分にも…」
小堀「それってさあ、誰でも一緒じゃん」
虎漢「それは、小堀さんだからですよ。深夜ラジオの百獣の王なんですから」
小堀「やめてよ、夜の帝王みたいじゃん」
虎漢「自分よりも劣る人間を侮蔑する。それが嫌で…。人との関わりを避けて…」
小堀「それってさあ、闇が深くなるね」
虎漢「…結局、自分が好きじゃないんです」

虎漢(M)…やばいよ。

【SE】発情期のような猫の鳴き声

小堀「さっきから、猫の声みたいなのが、聞こえるけど、猛禽類とか飼ってるの?」

虎漢(M)やばい、気づかれるかも…。

虎漢「小堀さんが【人生なんてさあ、なんとかなるんだよ!】って、言った時は、この人すごいなあと…」
小堀「やめてよ〜恥ずかしいから」
虎漢「ほんと、助かりました。でも、そんな言葉も効かなくなったんですよね」

虎漢(M)獣の意識が入れ替わる頻度が…。自分が望んだことでも…。

小堀「そこから、出ようと考えたりする?」
虎漢「今のところは…」
小堀「気持ちがあるなら大丈夫じゃん」
虎漢「…神様にお願い…」
小堀「神様に願いことをするときってさあ、皆、宝くじが当たりますようにって、お願いするじゃん、期待も込めてさあ…」
虎漢「…願いですから」
小堀「それって、ほとんどの人が同じことを言うじゃん。神様も、迷うんだと思わない?」
虎漢「神様ですよ、相手は…」
小堀「だからさあ、神様、宝くじ当たりました。ありがとうってやるんだよ」
虎漢「…えっ!当たってないし」
小堀「だろ、だから、神様も焦って探すんだよ。声の主をさあ…」
虎漢「…僕は、すぐに見つかると…」
小堀「そうじゃなくて、心の声だよ、こ こ ろ のさあ…」
虎漢「この形態だと…」
小堀「神様も、先にありがとうって言われたらさ…、当ててあげなきゃと思うんだよ」
虎漢「…人間のことですよね」
小堀「じゃ、ここで、曲を。サバイバーのアイオブザタイガー」
【SE】カフを下げる音

小堀「D、さっき彼の言った形態って、ゴジラの最終形態みたいなことかなあ?」

【SE】(FO)曲

小堀「虎漢さんの声が、もっと、聴きたいんだけど…」
虎漢「社内の雑音ばかり聞いてるうちに、このままだと、自分自身がダメになると思って、会社を畳んだんです」

虎漢(M)実際は、容姿の変化が現れて、やめざるを得なかった…。

小堀「えっ?経営者だったの、どんな会社、どんな会社」
虎漢「特定されると困るので…」
小堀「そうだよね」
虎漢「たかが10人くらいの小さい会社でも、従業員の中から色んな声が聞こえてくるんですよ」
小堀「そりゃ、不満はあるよねえ…」
虎漢「自分の能力に対しては、異常なくらいにプライドがあったんです。そうすると従業員がバカに思えて…」
小堀「やったねえ」
虎漢「バカだと思うから、結局、自分一人で仕事を進めていくことになるんです」
小堀「手放さないとさあ〜」
虎漢「結局のところ、自分で、自分の首を絞めて、また、自分が嫌になり、自暴自棄に突入みたいな…」
小堀「ループだよね」
虎漢「会社を畳んで、本格的な引きこもり状態に…嫌われてたから、従業員誰一人からも連絡もなく…」
小堀「後悔してる?」
虎漢「いや、でも…、う〜ん…」

虎漢(M)毛むくじゃらで、獣の社長なんて、嫌でしょう?誰でも…。あっ、やばい…。

【SE】発情期のような猫の鳴き声

小堀「世捨て人って、プライドを護るには最高の武器だよね」
虎漢「獣になりたかった…」
小堀「俺もさぁ、若い頃、同じように、海外に逃げ込んだことがったよ〜」
虎漢「…海外かあ…」
小堀「そう、逃げただけなんだよ。何も解決なんてしてないし、また、解決させようともしなかったし…」
虎漢「まさしく、今、そんな感じ…」

虎漢(M)意識も、人と、獣の入れ替わりも激しくなるし…。
小堀「でもさあ、今はさあ、きっと、そんな時間なんだって、流れには逆らわず、自分の第六感をさぁ、信じようって思うんだよ!」
虎漢「流れにかあ…」

虎漢(M)人の世界を嫌いになったことは、後悔してないつもり…。

小堀「じゃ、ここで、曲を。クレージーケンバンドのタイガー&ドラゴン」

【SE】カフを下げる音

【SE】(FO)曲

小堀「この曲のリクエストは、ゲストの虎漢さんからでした」
虎漢「動物って、自由気ままな感じに生きてる感じがするじゃないですか?」
小堀「RNの由来って?」
虎漢「由来?小堀さん、どう思いますか?」

虎漢(M)当たったとしても、そうだとは…。

小堀「えっ?僕が答えるの?えーっ、と…」
虎漢「博識だからな、小堀さんは…」
小堀「虎って、中国だと、龍に次ぐ霊性の高い動物だよね。そして、神の使い…」
虎男「流石、小堀さん!」
小堀「まさか、神の使いだなんて、言わないでね。心臓、ウプウプするから」
虎漢「今の状況が飲み込めないんです。自分の存在自体が得体の知れない物のようで…」
小堀「僕も、時々思うよ…」
虎漢「意味合いが、少しばかり違うんですよ」

虎漢(M)だって、容姿が虎ですよ…。

小堀「どこが…?」
虎漢「段々となんですけど…」

小堀(M)なんだ、虎漢さん、さっきまでと、ちょっとばかり、様子が変わったような…。

虎漢「僕は、生きることには執着がないんですよ」
小堀「死が怖くないの?」
虎漢「生と死の境がないので、死への恐怖感がないんです」

虎漢(M)今は、死ぬことよりも、人間でいれなくなることが、今一番の恐怖…。

小堀「もしかして…」
虎漢「僕は、神の使いではありませんよ」
小堀「じゃあ?」
虎漢「そこについては、自分でも理解できないでいる感じ…」
小堀(M)なんだよ、どうなってるんだよ?

小堀「理解できないって?」
虎漢「自分でも、理解不能なんです。やはり、何事もパンダみたいに白黒つけないとダメなんですか?」
小堀「僕は、グレー派だけど…」
虎漢「すみません、時々、どうも、意識の混濁で、言葉を間違える事が…」
小堀「君は、男?女?どちらなの」
虎漢「…どっちになるんだろう?」
小堀「ちょっと待って、曲に行って!」

小堀(M)こりゃ、とんでもない化け物か?単純にいかれたやつなのか?

小堀「もしもし、君は何者?」
虎漢「うーん」
小堀「今、喋っている君は、生きてるのか?」

小堀(M)AIじゃないよな?

【N】ディレクターより、次のコーナーに入りますとの合図。

小堀「虎漢さん、コーナー後で最後の話になります。ちょっと、待ってて」
虎漢「…は、はい。我慢しろ…」

【SE】発情期のような猫の鳴き声

【SE】はい、1、2、3。キュー

小堀「あの〜、虎漢さん、彼女はいないのかな?」
虎漢「今後のことを…」
小堀「いないの。ブサイクとかで悩んでてもダメだよ」
虎漢「将来的な展望が見えないと…」
小堀「【人生なんとかなるんだよ】って思ってくれてるんでしょ」
虎漢「あっ、そうだった」
小堀「虎漢さんの心の持ちようだよ、受け入れることも大切じゃん」
虎漢「…そうですよね」
小堀「虎漢さん、話をもう一度、元に戻す用でなんだけど…」

虎漢(M)小堀さんなら、きっと、わかってくれる、大丈夫。

虎漢「逃げ回る人生に、ケリをつけたいと思って、この番組に出たんです」
小堀「ケリ?」
虎漢「自分が嫌になり、引きこもるうちに、意識だけではなく、容姿も変化し…」
小堀「えっ、変化?」
虎漢「真面目に、聴いてもらえますか?」
小堀「ちゃんと聴くよ」

虎漢(M)落ち着け、落ち着け、わかってもらえるさあ。

【N】いきなり、リモートの画面が切り替わる。

虎漢「これが、僕の今の姿です」
小堀「ダメだよ、僕を驚かせようとしもてさあ。どこで見つけたの?上手くできてるねえ。このCG」

小堀(M)こんなことって、あるのかよ。上半身が虎だよ

虎漢「やっぱり、信じてもらえないか…」
小堀「本当なの?もしかして…」

【SE】(鳴き声)虎漢「ガォー」

小堀「猫じゃなかったんだ。ほんとに虎漢じゃん!」

小堀(M)画面付き、迫力が違うんだよ…。

虎漢「どう見ても、虎ですよね」
小堀「もう少しで、第三形態に突入…」

小堀(M)どうせ、パソコンの合成画像だよ、本物のわけがないもの。

【SE】ドアを叩く音

虎漢(M)誰だよ、こんな時間に…。

虎漢「えっ、なに、痛い。死んじゃうの?」

【M】中島みゆき 「世情」

【N】テレビのアナウンサー「年末に捉えられた虎ですが、現在、多摩動物公園で元気に生活しています」

虎漢「俺の部屋よりも大きいのが救いかなあ、でも、引きこもりと一緒だよ」

【完了】

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