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因果関係の因果

 中東では例年以上に砂嵐が吹き荒れているという。また今年は夏にかけてラニーニャ現象が続くという。

 どちらも地球の気温分布に関連したものだ。地域による気温の違いは気圧の違いを生み、風を生む。気温も気圧も風も、これらは相互に関連しあっているから、鶏と卵の関係にある。どれが先でどれが後かは分からない。というよりも、先か後かを見極めることにはそれ程意味がない。
 要するに因果関係を追っても仕方がないということだ。風が吹けば桶屋が儲かるとして、桶屋が儲かると…と続けたところで有意義な答えは見つからない。

 いま起きている物価の上昇についても同じだ。
 これと言う一つのことが原因で値段が上がっているということではない。色々なことが複雑に絡まりあって、その結果の値上げだ。戦争だって、金利上昇だって、国際間の賃金格差だって、ラニーニャ現象だって値上げ要因になる。
 このように、身の回りのことの因果関係はハッキリしていないのが普通だ。逆に言えば全ての事が関連していると言える。

 だから、レジ袋をやめたくらいでは地球温暖化は改善しない。小さなことからでも始めることに意義があるというのは間違いではないが、これだけ多くの人々がスマホを使い、ネットを使うようになったことによる環境負荷に見合った、個人ができる負荷削減目標は今のところ見当たらない。
 何か便利なものを手にすることと引き換えに増えた分のエネルギーコストと同じだけの、いや、それ以上のエネルギー削減をしなければ環境負荷は増え続けることになる。

 便利になるときに、その効率化によってエネルギーコストが減って見えるのはまやかしでしかない。エアコンで室内が冷えて快適になった以上の熱量が費やされて大気がより暑くなっているのと同じようなことだ。
 つまり、便利というのは便利を害する物事を目に見えるところから目に見えないところに追いやることであり、それには余分なエネルギーコストが掛かる。より無秩序になっていく方向に変化するという自然の摂理に逆らって秩序状態を増やすにはエネルギーを要するのだ。都市化することは膨大なエネルギーを消費することそのものだ。

 これ以上の地球温暖化を防ごう理念は素晴らしいが、その実現のためには、あなたの生活のすべてが温暖化させているのだということを、もっと身近に感じる必要がある。
 他人事でいる限りは何も始まりはしない。
 あなたが享受している便利が温暖化させている。私が余暇に興じるゲームが温暖化させている。あなたが聞く音楽が、私が楽しむ旅行が温暖化させている。
 温暖化を促進させているとか、温暖化につながるというのではなく、温暖化させていると認識することだ。
 通学で使う自転車が、通勤で使う電車が、買い物に使う自家用車が、店に商品を運ぶトラックが、あなたがトイレで用をたすことも、ベッドで眠ることも。
 私達の日常を支えるありとあらゆる事が、温暖化させている。
 そのことにみんなが気が付かねばならない。

 生活すること自体が地球温暖化そのものだということを知らなければならない。
 本当の対策はそこからしか始まらない。
 因果関係を解いて分かった気になったとしたら、結局何も分かっていないのと同じだ。そんな因果なことに陥ってはならない。

おわり

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