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映画『そばかす』

 主人公は恋愛感情が持てない女性。しつこいほど恋人はいるのか、結婚はまだかと母親に言われるのをかわす毎日。周囲の人も当然に、女は男が好きになるという固定観念を当たり前だと思っている。けれど彼女には普通の人のそうした感覚が分からない。

 なぜ友達では駄目なのか。それ以上に何があるというのか。好意を抱いてくれるのは良いが、そこから先に進むのが当然と思われても、どうして良いか分からない。だから彼女は、そうした自分の本当を隠して生きざるを得ない。

 異性を好きになるのが普通だとしたら、同性が好きになるのは異常。
 長い事そう思われてきた。
 同性が好きになって結婚したって、子供がつくれないじゃないか。それは生物としておかしい。そんな理由だ。
 では、異性も同性も関係なく、恋愛感情も性的興奮も感じないのは何なのか。奇形なのか。生きる価値がないのか。

 こと恋愛に関しては様々なタイプがあることが知られて来たわけだが、LGBTQというワードは受け入れざるを得ないものではあっても理解できないし、正直言うと気持ち悪いとすら思っている人は多いのではないか。
 自分がもしそうだったらと想像する時に、異性が好きな自分のままで同棲に性的興味を抱けるかと考えたら確かに気持ち悪いだろう。
 でもそうではない。
 それではあくまでも自分目線であって、そうでない人の視線は見えてこない。

 多様な考え方や性癖や恋愛対象のあり方を見聞きした時に多くの人は、自分はそうでないことを確かめてホッとしているのではないか。良かった、自分は正常だと。
 自分の中に人とは違う何かが棲んでいるという感覚が無い人に分かれというのは無理なのだろうか。みんな気がついていないだけで、人とは違うものを持っているのに、多勢に付くことで安心したくなる気持ちは分からないではない。

 表向きは多様性って大事だよね、と言いながら陰ではあの人ゲイだからさと言っている人は、きっと何も分かっていない。
 
 この映画を受け入れられる普通の人が増えることを願っている。
 
おわり


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