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金利政策の四面楚歌

 欧州でも金利の引き上げが決定された。理由は著しい物価上昇によるインフレリスクを抑えるためだ。高いインフレ率は経済全体の消費と生産を鈍化させるとしている。

 超低金利を維持する日本は、これでいよいよ四面楚歌になった。

 急激な物価上昇によって経済が冷え込むことが予測される中での金利上昇は、さらに金回りを悪くする可能性がある。それでも物価上昇をこのまま放置してインフレが進むことに比べればまだましとされ、物価の安定を取り戻すことに失敗すれば、もっと大きな痛みを伴うと米準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は述べている。

 つまり私達はいま、物価上昇か金利上昇かという、どちらに転んでも悪いことしか待っていない二者択一を迫られている。どちらを選択するほうがマシなのか。

 インフレは、カネの価値の低下を意味する。
 金利は、市場に出回るカネの量をコントロールするのに使われる。ダブついた市場のカネを引き揚げればインフレは抑制される。
 物価上昇は相対的にカネの価値を下げるからインフレになる。

 経済原理では供給と価格が反比例するとされる。つまり供給が増えれば価格が下がり、供給が減れば価格が上がる。これに当てはめると、市場にカネが沢山あるときはカネの価値は下がり、市場からカネが無くなればカネの価値は上がる。
 一般的に金利を下げれば市場のカネは増え、金利を上げればカネの量が減る。
 だから金利を上げればインフレを抑制出来るという理屈だ。

 物価高とインフレの違いは、物価高がいま売っているものの価格が上昇することであるのに対し、インフレは既に持っている資産が目減りすること。
 結局は同じお金で買える物が減るという意味において同じことなのだが、モノの価格が上がることとカネの価値が下がることはイコールではない。

 それでは金利を低いまま維持すればどうなるか。
 物価上昇により相対的にカネの価値が減っているからインフレに傾く。そうなれば円安になるからより一層カネの価値が減る。つまりインフレスパイラルに突入するかもしれない。
 そうなったとしても名目上の賃金上昇があれば良い。インフレ率を反映した賃金増が実現出来るのであれば生活には影響がない。財布の中の札が増えて邪魔になるだけだ。

 ところが、賃金はそのままでインフレというのはたちが悪い。それでは皆貧困にあえぐことになる。
 そんな状況にも関わらずなぜ日本はインフレ抑制のための利上げをしないのか。
 利上げをすれば経済に悪影響があるのは目に見えているが、インフレが止まらない状況に比べれば良いように思える。
 きっと円安の方が特をするという人々がいるのだろう。

 ところで、そんなことを考えている最中、日銀総裁がインタビューに答えて「1日に2円も3円も動くのは急激だ」と円安を牽制する発言をしたという。それ以降ドル円相場は円高に触れて2円以上円高になっている。
 急激なのは困るという発言が急激な変動を誘うとは皮肉なものだ。

おわり


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