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映画『FALL/フォール』

 高所へのクライミングをSNSで投稿しようと企てた二人の女性が、荒野に建つ地上600mの電波塔に登頂した。しかし二人はその頂上に取り残されてしまう。
 水も食料も無い中で、降りる足掛かりを失った二人はどうやって生き延びるのか。

 高いところが苦手な人や、取り残される恐怖に耐えられない人は見ない方がいい。高いところが苦手な私が見てしまったのはチョイスを誤ったからだ。それでも最後まで見てしまったのは、恐怖に下半身を縮み上がらせながらも、結末を見届けずに終わることが出来なかったからだ。

 映画だから、本当に高所で撮影しているわけではないだろうと思いながらも、高さを感じずにはいられないのは、視覚の錯覚と想像力のなせる技だ。本当には起こっていないことを画面越しに観ているだけでこんなにも恐怖を感じるのだから、逆に言えば脳が見せる現実は当てにならない。受け入れられないような現実に遭遇した時に現実には無いものが見えたりするのも脳の機能のひとつだ。そうやって脳は何かを守ろうとしているのだろう。この映画を見ながらかいた冷や汗も、きっと何かを守ろうとする反応のひとつに違いない。

 パニックになってはいけないというセリフが出てくるが、こんな状況に陥ってパニックにならない方がおかしい。冷静さを保っていられるわけがない。私は映画を最後まで見た気になっているが、きっと恐怖のあまりに途中で気を失って、本当は見てもいないストーリーをもとにこれを書いているのだ。

 考えてみれば、高所に恐怖を感じるからこそこの映画の価値があるのであって、本当にお勧めしてはいけないのは、高いところ好きの人や冒険好きな人なのかも知れない。

おわり


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