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批判と非難 ー Think Critically

 批判的精神のもとで意見を言うことと、非難することは全く違う。
 前者が良い結果を得ることを目的に行われるものであるのに対して、後者はネガティブな思考によるものであって、そこから良い結果を導くことは出来ないものだ。

 クリティカル・シンキングとも言われる批判的思考。
 批判的思考とは、簡単に言えば問題を論理的に分析して解を導き出すための思考法のこと。
 英語でcriticalというと、何か「ギリギリ」のイメージがする。ギリギリのところで踏み止まるというか、ギリギリまで突き詰めて考えるというか。
 criticalの語源はギリシア語の「判断する」を意味する言葉だという。判断するにはcritical thinkingが必要ということか。

 例えば、「役人の政治家への忖度による不正は厳しく批判される」といった場合、厳しく「非難」されるのとは全く違う。どうしてそんなことが起きてしまったのか突き詰めて検討することが必要といったような意味だ。言い換えれば、厳しい内省が求められる、というようなこと。

 そう感じるのは私だけなのかもしれないが、報道や人々の会話に出てくる「批判」という言葉は、「非難」と同義かそれに近いニュアンスで使われているように思える。批判には前進があるが、非難には進歩がない。みなが進みたがらなくなっているのか、他人を進めたがらないのか。

「だめだよそんなやり方では」というのは批判ではなく非難。
「今回駄目だった原因を追究して何か対応策を考えなきゃ」というのが批判。

 言葉は生きていて、多くの人が考える意味が正しいとされる。つまり、批判という言葉を皆が非難という意味で使い、受け止めるのなら、批判は非難と同義になるのだろう。

 でも、それでは批判的思考が失われてしまう。

 我々の思考は言葉とともにあり、言葉は思考を作る。
 言葉の意味がスポイルされてしまったとき、思考は単純化し、知恵は退化していく。単語の持つ、これまであった概念が消えて別の概念に置き換えられてしまうことで、そんな概念があったことすら忘れてしまう。

 批判出来なくなってしまったら、人は前進出来なくなる。

 新たな言葉が生まれるまで。

おわり


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