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クラシック音楽は退屈?

 ヨーロッパと違って、日本ではクラシック音楽と言えば多くの人に退屈でつまらないと思われている地味なジャンルだ。
 とはいえ、音楽教室の教育メソッドの多くはクラシック音楽の流儀を取り入れている。そもそもポップスであれロックであれ、音楽理論自体がクラシック音楽をベースにしていて音楽について何か学ぼうとするとクラシック音楽の匂いがまとわりつく。
 クラシック音楽は本当に地味で退屈な音楽なのだろうか。

 現代の若者の多くが耳にする音楽は、ポップス、ロック、ジャズ、そしてダンス・ミュージック系、ラップ、ヒップホップなど実に幅広い。これらを現代流行音楽と呼ぶことにするが、これらの音楽とクラシック音楽の違いは、ビートにある。ドラムスなどのいわゆるリズム楽器が刻む強いビート感やベースが奏でるグルーブ感、どちらも現代流行音楽にとっては重要な要素だ。

 音楽の授業を思い出してほしい。
 音楽の三要素は、リズム、メロディー、ハーモニーと言われる。もちろん、この三要素を唱えているのはクラシック音楽。しかし、この三要素はクラシック音楽に限らず、すべての音楽に共通する要素だ。
 この3つの要素をバランス良く調和させたのがクラシック音楽だとすれば、現代流行音楽はリズムにかなりの重点が置かれ、次にメロディーが来る。ハーモニーについてはコードとコード進行という考え方に分かりやすく纏められている。楽器同士のアンサンブルによるハーモニー形成よりも、ギターやキーボードのような、コードを奏でられる楽器を配置することで済ませている。

 そして、クラシック音楽と現代流行音楽のもうひとつの違いは、歌詞にある。もちろんクラシック音楽にも歌があるが、歌唱という楽器を活かす位置づけだ。それに対して現代流行音楽ではリリックの重要度はかなり増している。ここでの歌の位置づけはクラシック音楽とはかなり異なり、誰もが口ずさむことが想定されている。それは流行という大量消費を対象とした資本主義経済とマッチしたことにより発展した。
 そして歌うことはカラオケという受け皿によってさらに発展し、誰もが音楽を受け身で聞くだけではなく、自ら参加して体験することを可能にした。

 音楽の発祥を考えてみれば、人がメロディーに乗せて何かを口ずさんだことや、棒で何かを叩いて音を出すと言ったことだろうから、現代流行音楽はクラシック音楽という回り道をした挙げ句に音楽のルーツに戻ってきたと言えるのかもしれない。

 ただじっと座って聞かなければいけないクラシック音楽は、確かにつまらないかもしれない。自ら歌い、リズムに身を任せて音と音楽と一体化することを実体験出来る現代流行音楽に比べれば。
 逆に言えば、何年にも渡ってかなり特殊な訓練をした音楽家でなければ再現できないクラシック音楽は、音楽の重要な要素を極度に洗練させたものと言えるかもしれない。そんなクラシック音楽が、古典と言われるいにしえの時代に創られたことを考えると、昔の人は凄いなぁと思わざるを得ない。
 古典でありながら、現代でも脈々と受け継がれ、新たな息吹を吹き込んだ演奏が続けられていることは、それだけで感動に値すると思うのだが、どうだろうか。

おわり

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