映画『黒い司法 0%からの奇跡』
理想を言えば、司法が正義と慈悲を持って裁くのであれば間違いは起こらないと信じたいだろう。現実には、司法が何かの偏見や利害関係に毒されていないとしてもなお、真偽を正しく決することは出来ない。いかなる証拠を集めようとも、反対側から見れば違って見えるものだ。もちろん、誰かが嘘をついていない前提だが。
社会に生きる以上、私たちは様々なバイアスから逃れることは出来ない。
肌の色だけで罪人と決めつけるなど荒唐無稽だと思うかも知れないが、ついこの間まで日本でもこれに匹敵するような差別意識が横行していたし、今でも完全には消えていないだろう。
死刑判決を受けて執行を待つだけの囚人を再診に導き無罪を勝ち取るというサクセスストーリーは使い古されている感がある。それくらいこうした事例が多いというこでもあるのだろう。この映画の場合、そして多くのこの種の映画の場合、真実に基づいたストーリーであるから、結論は分かっていても釈放が決まる瞬間は感動を呼ぶ。それまでの苦悩が喜びに変わる瞬間でもある。
こうした物語では囚人と弁護士だけが主人公ではない。家族、友人、協力者、証人。あらゆる人々の勇気と決意があってこそ実現される。関係者全員が主人公と言っても良い。
弁護士役のマイケル・B・ジョーダンは本作のプロデューサーでもあり、他の作品では監督もこなす映画人だ。脇を固める俳優陣も実に巧い。映画の中の世界に引き込む力は堅く、2時間17分を長くは感じさせない。
いつ無罪の罪で逮捕・起訴され、死刑にならないとも限らないような世界に住むことの恐怖は計り知れない。日本に済んでいては感じる機会は生涯無いだろう。でも、こうした物語を通じて想像したり理解しようとすることは出来る。何が正義で、何が平和なのか。考える切っ掛けには十分なるだろう。
おわり
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