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逆走は命にかかわる危険行為です、という広告

 広告にこのようなキャッチコピーが掲載されている限り逆走は無くならないと思った。
 このメッセージに、逆走が無くなりますようにという願いが込められている事は分かる。それは分かるが、願うだけで良いのか。そんなことで逆走が無くなると本当に思っているのか。

 このメッセージを読んで、確かにそうだ逆走は危険だからやめようと思う人は逆走などしない。そうだったのか逆走は危険なのかと思う人も多分逆走はしない。何を馬鹿なことを私が逆走するわけ無いじゃないかという人は逆走する可能性がある。逆走ってどういうことだ私の運転はまだまだ大丈夫だという人は多分逆走する。

 しかし、どういう人が逆走する可能性が高いのかはこの際問題ではない。
 逆走は危険だからやめましょうねと投げかけることで逆走が無くなると思い込んでいる側にこそ問題がある。
 逆走してしまうときは逆走してしまうのだ。
 それは自分が逆走しようとしていることを把握できなくなった時だ。あえて危険な逆走にチャレンジしているのではない。

 このような広告が掲載されるに至る経緯は思うより複雑なのだろう。色々な人の意見を聞いているうちに骨抜きになってしまうのはありがちだ。
 重要なのはこの広告で逆走を防止する効果がどれだけあるかだ。
 恐らく本人がこの広告を見ることを期待するというよりも、家族や知人が見て本人に注意するというようなことが期待されているのかも知れないが、そんなことで防げるのだろうか。
 逆走の危険性を流布することに予算を投じるよりも、逆走出来ないような仕組みづくりにこそ注力する必要がある。

 似たようなことは企業の中でも起きている。
 何かのミスや事故が発生した場合、あなたの会社に「気が緩んでいるからこんなことが起きるんだ。もっと気を引き締めろ!」という上司がいたり、「このようなことが起こらないように最大限の注意を払うようにします」という説明を聞くが、それはそれとして、仕組み上そういったミスが起きないようにして行かなければ、人がやることなのだから再発することは必至だ。
 どんなに注意していても、どんなに気を引き締めていても起きるときには起きる。
 だから、起きないような仕組みづくりを皆で考えた方が良いし、防止する仕組みが出来ない場合は、もし起きたとしても損失が最小で済むようなリカバリー方法を考えておくべきだ。

 技術的に逆走防止の仕組み、たとえば高速道路入口の設計見直しをするのは時間もお金も掛かるだろう。
 だとしたら、逆走したとしても大事故にならないような対応手順を考えた方が良い。幸い高速道路の逆走で大事故になったとはあまり聞かない。監視カメラが複数あって常に道路上が監視されているから、既に逆走対策が出来ていると言えるのかもしれない。
 とすれば、あの広告は何なんだろう。

おわり

 

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