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Netflix映画『マン・フロム・トロント』

 映画まるまる一本、あのアンジャッシュ風の「すれ違いコント」にしてしまったような作品だ。
 主人公の二人はボケとツッコミそのものであり、その意味では漫才でもある。
 それがアクションあり、友情あり、愛情ありのエンターテインメント作品に仕上がっているのだから素晴らしい。

 トロントから来るという殺し屋は、口を割らせるなら一級品。相手は、拷問の匂いを漂わせるだけで怯えて吐いてしまうのだから血生臭さは気配しかしない。その彼が絡む大使館爆破事件が起きようとしている頃、もう一人の主人公、勤めるトレーニングジムを頸になったばかりのうだつの上がらない男が、妻の誕生日のために郊外のコテージでの大切な夜をプレゼントしようとしていた。その彼が、気がつけば世界を救うミッションにとって重要な役目を果たすことになるとは。

 下手をすればドタバタ過ぎて下品になりかねないアメリカのコメディが、小気味よいアクション映画風にまとまっているのは元々は世界での劇場公開を予定されていた作品だからかも知れない。こうした映画はどこかB級の感じがするものだが、この作品にはその風味は全くない。きっと細部まで手を抜いていないのだろう。結果としては、コロナ禍の影響もあってかNetflixでの公開となったようだ。

 人生何が起こるか分からないのだから、今を大切に、友人を大切に、そして妻との時間を大切にしよう、なんて教訓が込められていると思うのは買いかぶり過ぎだろうか。他にもある。どんなにバカで間抜けな奴でも優しささえあればきっとどこかで役立つことがある。成功はお金さえあればつかめるというものではない。そしてレバーは下ろしてはいけない。
 あなたならどんな教訓を見出すだろうか。

おわり


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