① 日常生活における論証を支える「順序」
「順序よく話しましょう・書きましょう」と指示された記憶は誰にでもあるでしょう。本マガジンではこの「順序」について考えていくことにします。
結論から先に述べますが、本マガジンでは「順序」とは「具体的な事実を配列する順番」であると考えていきます。そうなりますと、日常生活レベルの論証のひとつの部分を支えるものが「順序」であると言えます。
マガジン「論理的思考・表現の在り方(構造編)」では、以下のように日常生活における論証の構造を提示しました。
根拠となる具体的な事実
↓ *帰納
判断・考察(データ)
↓ 根拠となる具体的な事実
↓ ↓ *帰納
↓ ←←←← 判断・考察(理由づけ)
↓ *演繹
主 張
ここにおいては、日常生活において蓋然的になりがちな「データ」「理由づけ」の蓋然性を高めるために、その根拠となる具体的な事実を位置づけてそこから帰納的に導かれた構造にすることを基本的なものとしました。
帰納的に導くためには、複数の具体的な事実の位置づけが必要になってきます。この複数の具体的事実を「配列する順番」が「順序」であるということになります。
蓋然性を高めるためには、位置づける複数の具体的な事実の質(根拠としての価値)はもちろん大切なことになります。しかし、大切なことは受信側に「蓋然性が高い」と思わせることにあります。そのためには、複数の具体的な事実を「配列する順番」も大きな影響を与えることになるのです。
例えば二つの具体的な事実を位置づけるにしても、どちらを先に位置づけるかによって受信側に対する説得力は大きく変わってきてしまうのです。後述しますが、「既知から未知へ」という「順序」は、ただ思いついたまま複数の具体的な事実を並べるのではなく、相手にとって「既知」のものを先に示しその後に「未知」のものを示すという並べ方となります。こうすることによって、相手に対して具体的な事実の印象を強め「データ」や「理由づけ」を「蓋然性が高い」と思わせる効果を上げることになるのです。
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