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酒飲みとの一線
その日、晩ご飯のお供にと久しぶりにつけたテレビ番組『孤独のグルメ』で、主人公の井之頭五郎が定食を食べていた。
ご存知ない方もいるかと思うので先に説明しておくと、五郎はまったくアルコールが飲めないキャラクターだ。そのため、このドラマ内では、主人公がお酒のお供に食事をするという描写はない。
そこで供された定食の小皿の中に、イカとマグロの刺身があった。
お刺身を箸に取った五郎は、それを白く輝いたご飯の上にバウンドさせて口に運び、間髪入れずにご飯をひと口、ふた口。
おいしそう。確かにおいしそうだ。しかし、うーん。
「私、お刺身ってどうもご飯のお供っていう感じがしないんだよな」
おでんを口に運びながら首を傾げる。
「あぁそれはな、酒飲みとの一線やで」
私の正面で五郎の刺身を羨ましそうに見ていた下戸の夫が、本当になんでもなさそうなトーンでこちらをちらりと振り返り、言い放った。
酒飲みとの、一線…?!
そのような視点でものごとを考えたことはなかった。
そうか、刺身を見てご飯を食べたいか、それとも酒を飲みたいかで、ひとつの線が引かれているのか。
刺身といっても例外もある。たとえば丼になればまったく違和感なく食べるし、寿司だって大好きだ。でも、あの刺身で盛られた『ザ・お刺身』がどうも、ということだ。
酒飲みの一線、もしかしたら他の食べものでもあるのだろうか。
たとえば、ホッケの開き。私は絶対お酒のツマミにしたいが、ご飯のおかずでもアリだよなぁ。唐揚げも近いものがあるかもしれない。それから、ご飯のお供にもお酒のツマミにもなるもの、塩辛やキムチなんかもそうかな。
こういう、違う角度を見つけた瞬間ってなんだかおもしろい。
酒飲みの一線、他にもあったらぜひ教えてください!
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