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金木犀(について、語り足りない)

 はた、と足を止めることがある。
 金木犀の香りを嗅いだ時だ。
 歩いていると不意に尋常ではない、厚みのあるなんとも良い香りがしてくる。
 わざわざ毎回ハッとして(急いでいない時だけ)立ち止まって、辺りに橙色の小ぶりの花を付けた木がないものか探してしまうので、なんだか中二病のようだな、とも思う。「何か」が来たことに私だけ気がついて、用心深く回りを窺う、みたいなシチュエーション。
 いつもは大して注目しない常緑樹がいきなり存在感を増すので少しだけぎょっとするとともに、この香りが好きなので金木犀を発見できると嬉しくなる。


 因みに、母に金木犀の話をしていると、郷里の小学校では「雪隠の外に金木犀が植わっていた」という話を聞かされた。芳香剤の代わりなのかもしれないが、それにしては、花をつける一時期しか効果がないよね、と母は笑っていたが、私のほうでは「雪隠」という言葉に趣があると、そちらばかりに気が取られてしまった。
 漢字に意味があるのかと思ったら、禅の僧侶が由来になっているらしい。
 名前が使われるにしては用向きが悪い気もするが、趣がある、と感じてしまう位だから良い言葉なのかもしれない。


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