飛蝗蟷螂考(※虫の話です)
先月まではバッタだったが、今月はカマキリになった。
家の玄関にたどり着くまでは少し距離があって、その間に見た虫の話である。
一応定期的に整備されているのだが(私はほとんど関わっていない)、高温多湿な気候なので雑草はどんどん伸びてくる。虫も育ち放題、虫を求めて鳥もやってくる。
どちらも特に詳しくはないが、自然溢れる我が家は嫌いではない。特定の虫が苦手という弱点はあるが、前述のバッタもカマキリも余程グロテスクな場面でなければ平気だ。
先日仕事から帰ると、庭を縫うように舗装してある道のど真ん中、満月の光に照らされてバッタがまどろんでいた。まどろんでいるのか本当は知らないが、そう判断したのは、足音を立てて近づいても動こうとしなかったためだ。
肝が据わっているのか。
バッタの肝はどこにあるのだろう。
バッタの真ん前にしゃがみ込んで、試しにそっと後ろ足をつついてみたがじっとしている。こちらが何をしようと歯牙にもかけない様子だ。
小学生だったならば捕まえたかもしれないが、そこまでの好奇心はない。
帰ったら手も洗って夕飯も食べるし。
数歩進んでから振り返っても、バッタは同じ場所で月光を浴びていた。
今月に入ってから、同じ途上でカマキリを見かけた。舗装された道なのに、何か虫にとって楽しい所があるのだろうか。
またあのバッタか、と思ってよく近づいて見たら、目がちょっと飛び出ている。
カマキリは首をひねり上げて、じっとこちらを見据えていた。目が合っているのが分かった。
跨ぐ訳にもいかないので道の端に避けて通ったが、その間もカマキリは首を動かして視線を外さない。
こいつはつつけないな、と思った。
数歩進んでから振り返っても、カマキリはじっ、とこちらを見ているような気がしてならなかった。
普段積極的に虫に親しまないので、バッタとカマキリが皆こんな習性なのかは知らない。が、月光浴をしているバッタは稀なのではないかと勝手に推測している。風情があるバッタだと、思いたい節がある。
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