名人伝/中島敦

 読了。ネタバレあり。

 弓の名手になろうと思った男が、その筋では最強の人物のもとへ教えを乞うところから始まる。男はその人物の言うことをよく聞き、日々修行に励み、やがては師に並ぶ力を得る。となると、最強の男は自分でいいと、男は師を殺そうと企てる。しかし力の拮抗した二人は、弓の撃ち合いを経て互いを称え、師はまた殺されそうになっては堪らんと、更に高みにいる新たな師を男に紹介する。

 男は新しい師の元で修行をする。そして、下界に下りてきた男は弓を持とうとしない。弓を持たざる男のことを民は「弓の名手」だと崇め、男は弓の名手として生き続ける。

 やがて、男は弓の名手でありながら弓を忘れてしまう。これを聞いた民は、己の得意とする道具を持つことを恥じることになった。

 わたしは致命的に読解力がないのでなんと言っていいかわからないのだが、あえて言うなら「名人となるまで極めると、その技を見せびらかすこともなく、忘れてしまうまでに触れなくなる。己の内で己に納得がいってしまうと、人はそれをすることがなくなる」のかなあと思った。自分が満足してしまうと確かに人はもうそれをやらなくなるものだからなあ、と。いや、きっともっと深い解釈ができるのだろうが、わたしにはこのくらいのことしか言えない。切実に読解力がほしい。

 弓を忘れた男は本当に「名人」なのか? そんな疑問も残る。これについてはじっくり考えるとしよう。

 固くかっちりとした文章だが読みやすいのはさすが文豪といったところだ。中島敦くんは父親にもオススメされているので、どんどん読んでいきたい。

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