白昼夢/江戸川乱歩

 読了。

 ふらふらと道を歩いていた「私」が、一人の男が人々に笑い者にされているのを見かけるシーンから始まる。その男はなかなかにちゃんとした装いをしていて、乞食の類ではない。

 その男は「妻を殺した」と言った。妻を殺して、己の薬屋に飾ってあるのだと。「私」はその蠟化した女の死体を見て、慄いて警察に男を突き出すことも出来なかった。

 美しい妻の姿――それを永遠に自分のものにするために妻を殺した男。愛憎入り乱れた気持ちが、男にはあったのだと思う。他の男を見る妻が憎い、けれど愛している。誰にも妻を取られないようにするために男が選んだ方法は殺人だった。

 なんだか気持ちはわかる気がした。わたしは狂おしいほどの恋をしたことがないので、わからないと言えばわからないのだが、それでもきっと本心から好きな人ができて、その人が自分以外の誰かに浮気心を出したら首を絞めてしまうかもしれない。人々の嘲笑の中で男が「妻をバラバラにした、俺は妻を好きなときに抱き締めることができる」的なことを言っていたのが印象的だった。

 男は人殺しだ。「私」は怖くなった。わたしもぞくりとしたものを感じた。短い話なので感想を書くのが難しい上に、わたしはアホなのでろくな感想が言えないのでここまでにしておく。

 個人的に江戸川乱歩くんは好きな作家だ。明智小五郎シリーズはおもしろいし、文章も読みやすい。まだまだ短編がたくさん残っている。これからもどんどん読んでいきたい。

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