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2017年4月30日 教育者のためのマインドフルネスデー シスターインサイトの話

先生たち、今日は忙しい中来てくれてありがとうございます。ここ数年プラムビレッジでは先生たちのためのリトリートや気づきの日などを開き、マインドフルネスを先生たちに伝えることに力をいれています。

ここにタイ(ティク・ナット・ハン師)の言葉があります。「happy teachers will change the world」先生が幸せだったら世界を変えることができる、という言葉です。教えることは本当に尊いことだと思います。若い人々の人生に影響を与える仕事です。それはやりがいがあると同時にチャレンジがある仕事だと思います。

どんな仕事でも人と関わることは簡単ではありません。でも、先生たちが直面している問題を事前に聞いたときに、その大変さに同情してしまいました。

まずは自分自身のケアをする必要があります。私たち僧侶が自分自身の苦しみと向き合って、自分自身のケアをする必要があるように、先生たちも苦しみと向き合って、それを変容させていく必要があります。

今日のプラクティスは、自分自身をケアしていくためのものです。それは日常で簡単に使えるもので、自分自身が幸せになるためのものです。

日本ではすでに仏教に基づいた文化がありますが、タイは仏教の教えを宗教に関係なくプラクティスできるようにしました。私たちが私たちの人生を深く生きることができるように。

私たちは鐘の音を静かに聞きます。

そして息を吸って、息を吐きます。

鐘の音を聞くと自分の中のマインドフルネス育むことができます。なぜなら、鐘の音とともに自分の息に気づくということは、この瞬間にたしかに存在していることを感じるということだからです。

私たちは普段はあれを考えたりこれを考えたり休むことがありません。わたしたちの思考はお猿のように頭の中をかけまわっています。

呼吸に帰るということは、お猿のようにかけまわっている思考を止めて、今ここで何が起こっているかを感じる練習をするということです。自分自身の呼吸に注意を向けた時、自然と思考はとまります。

私たちは呼吸をコントロールしてわざわざ深くしたり、長くしたりするわけではありません。ただそこにある自然な呼吸に気づく、ということをやるだけです。

マインドフルネスは光のようなもので、その光をあてることで、そこにあるものを見ることができます。太陽の光は無理やり花を咲かせるわけではありません。太陽の光があることで、花は自然と開くのです。マインドフルネスとはそのようなものです。

私たちは24時間いつも呼吸をしています。なので、マインドフルな呼吸はいつでもすることができます。お寺に行く必要があるわけではありません。日々の行動の中でできるものです。

自分自身の呼吸に帰るということは、自分自身の身体に気づくということです。自分の身体に気づくことができれば、リラックスすることができます。もし、自分の身体の中に緊張感があったら呼吸にかえることが大切です。

マインドフルネス実践の目的は身体に気づくということです。身体はふれることのできる具体的なものだから。私たちの身体をスキャンして、じっくりと身体を見ていくことで自分の身体をいたわり癒すことができます。

今まで自分の身体を無視してきた人もいるでしょう。自分の身体を無視するとどうなるかというと、病気になったり、気の流れが悪くなり、疲れたり、ひどい場合はがんになったりします。だから、自分自身の身体に気づいているということはとても大切です。

今日一日は、呼吸の仕方を知るための一日です。それは自分自身をケアするための方法を手に入れるということです。

身体のケアをする、ということは心のケアをする、ということでもあります。精神面はまた身体にも表れるからです。

身体のどこかに痛みがあるとしたら、それは心の怒り、恐れ、ストレスのあらわれかもしれません。自分の身体や痛みに気づきケアをするということは、自分の心を癒すということです。身体をいたわるということは、心の中の怒りや恐れをいたわるということなのです。

プラクティスをはじめるには、具体的なものからはじめるのがいいです。実際にそこにあってふれたり感じたりできるものから。だから身体と呼吸からはじめてください。身体のケアができるということは、心のケアができるということなのです。

真の愛とは、そこに本当に存在することです。自分を愛するということは、自分が本当にそこに存在することです。自分自身を本当に受け入れて初めて、真の意味で人を愛せるようになります。

今この瞬間にくつろぐことができれば、なぜ自分が今このようになっているのかがわかります。なぜ自分にこのような苦しみや困難があるのかが見えてきます。これを洞察または智慧といいます。

深く見るということは単に頭の中で考えるということではありません。心がクリアになった時に見えてくるものです。イメージとしては池のようなイメージです。風が吹いていたり、雨が降っていると、表面が波立っています。でも晴れていて風ない日は、池の上に周りの美しい景色が映し出されます。

暗闇の中にいて、先が見えないように感じることもあるかもしれません。生きる意味がないように思ってしまうこともあるかもしれません。それは悲しいことです。

呼吸に帰るということは自分自身に帰るということで、そこに智慧があれば自分自身を自由にすることができます。

もう一つみなさんと分かち合いたい実践があります。

それは「深く聞く」という実践です。

先生として話を聞くということはとても大切なことですが、まずは自分自身に耳を傾けることが大切になります。朝か夜、10分でも15分でも自分一人になって、呼吸にかえり、自分自身を掘り下げていく時間をぜひもってください。

身体を深く見て、「そこになにがあるのかな?」と探っていってください。ごちゃごちゃいう声が聞こえるかもしません。それはあながたずっと避けてきた声、面と向かっていないストレスかもしれません。

その声と共に座り、微笑みかけてください。「わたしはあなたと一緒にここにいるよ」と。ただマインドフルネスのエネルギーでその声を聴けばいいのです。

自分をジャッジしたり非難する必要はありません。そこにあるものをただ聞いてください。自分を責めないで。

自分の声を聴くと、自分の両親の声が聞こえてくることがあります。そしてあなたは実は、あなたの祖先や社会や教育の産物だと気づくでしょう。自分が相互的な存在だと気づけば自分を受け入れることができます。そうすれば、周りにいる人のことを非難することなく受け入れることができます。

先生自身が安定していること、自分自身を理解することがとても大切です。そうすれば、子どもたちを助けていくことができるから。

(翻訳・書き起こし:Kumiko Jin)

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ティク・ナット・ハン「マインドフルネスの教え」
HP: https://www.tnhjapan.org/
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