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不条理短篇小説

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現世に蔓延る号泣至上主義に対する耳毛レベルのささやかな反抗――。
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2015年12月の記事一覧

悪戯短篇小説「河童の一日 其ノ六~河童vs家電量販店~」

悪戯短篇小説「河童の一日 其ノ六~河童vs家電量販店~」

河童だって音楽が好きだ。文字どおり、音を楽しんでいる。といっても、川のせせらぎとか鈴虫の鳴き声とかじゃなくて、普通に人間の好む音楽を河童も聴く。エミネムとか。NO MUSIC,NO KAPPA LIFE.

ただしイヤホンがすぐ駄目になるので困る。河童は年がら年中濡れているから。むしろ乾いたら死ぬ。特に耳は急所ヘッドソーサーに近い場所だから、乾いたら致命傷だ。

かつてイヤホンを防水加工しようと思

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悪戯短篇小説「河童の一日 其ノ五」

悪戯短篇小説「河童の一日 其ノ五」

今日は八百屋のおっさんにきゅうりで殴られた。売りもので殴るなんてどうかしてる。ちなみに二刀流だった。

しかもきゅうりが僕の大好物だってことを、八百屋のおっさんはもちろん知っている。となると、「わざわざ相手の好物を用いて殴る」という行為は、果たして厳しさなのか優しさなのか。「どうせ殴られるなら、自分の好きなもので殴られたい」という気持ちが、人間には存在するのだろうか。「どうせ溺れるならプリンの海で

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