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「ゲーム作り×お仕事漫画」の革命! ゲーオタ陰キャ女子高生が業界を一新する『虹色ゲームメーカー』

【レビュアー/西川裕貴

こんにちは! ゲーム制作会社「サイバーコネクトツー」の西川裕貴です。

突然ですが、皆さんは「天才」に対してどんなイメージをお持ちですか?

【天才】
 天性の才能、生まれつき備わった優れた才能の持ち主。
 特定の分野で比類なき創造性を発揮している人。

私は“スゴイ”や“カッコイイ”といった「憧れ」や「尊敬」のイメージと共に、理解が及ばない存在という意味で「恐怖」のイメージを持っています。

ただ、そんな完璧のように思える天才にも「物事の視点」や「評価の軸」の違いなどから、集団から孤立してしまったり、独創的なアイデアに対して周囲の共感を得られなかったり…といったような悩みがあるみたいですね。

さて、そんな流れで今回ご紹介する作品はコチラです!

主人公はゲームオタクの冴えない女子高生・虹野まどか。

コミュニケーションが苦手で学校や家庭で孤独を感じる彼女ですが、自作のゲームがSNSでバズったことがきっかけで、有名プロデューサーからゲーム会社にスカウトされることになる…といったあらすじです。

「現実でそんな夢みたいな話ある?」

「どうせ漫画のご都合展開でしょ?」

なんて思った、そこのアナタ!

これがですね、意外と起こりうる話なんですよ。

ゲーム会社の人事・採用担当や現場のクリエイターは、SNSを日々チェックしています。

クオリティが高い学生作品を見つけた時は「いいね」をしたり、声をかけたりすることがありますので、本作は今の時代ならではのストーリー展開だなと感じました。

その後、主人公はゲーム会社にアルバイト入社し、思い切ったアイデアで現場のクリエイターたちを驚かせていくといった展開になるのですが、本作を読みながら私は何とも言えない「違和感」を覚えました。

いつもだったら主人公が活躍するシーンはテンションが上がるのですが、本作では主人公にうまく感情移入できず、テンションが上がるどころか時折「恐怖」を感じたのです。

「恐怖」の正体が分からないまま単行本を読み終えた私でしたが、その後、キンキンに冷えた缶コーヒーを口に含んだ瞬間…唐突に理解しました。

“……分かったぞ! 主人公が「天才」だからだ!”

・天才と凡人とでは「物事の視点」と「評価の軸」が違う
・凡人には天才の思考が理解できない、共感できない → だから「怖い」

だから「凡人」の私が、主人公を「恐い」と感じてしまったのだ……と。

作中、会社の上司や新人のエースが、思考が読めない主人公に対して「恐怖」を感じるシーンがいくつもあるのですが、まさか読者にも恐怖体験をさせてくれるなんて…。

たかし♂先生恐ろしい人ッ!(素敵)

ちなみに、先生の過去作『これだからゲーム作りはやめられない!(全3巻)』は、ゲーム業界あるあるネタ満載で、業界人なら共感必至の胸熱な作品でした。

それに対して本作『虹色ゲームメーカー』は、「天才」を主人公に据えることで読者の共感・感情移入を断絶させ、常識では測れない「天才」が集団の中でどのようなイノベーション(革新)を起こしていくのかを”ゾクゾク”しながら見届けよう…といった作品なのかなと思いました。

ゲームがジャンルの作品は数ありますが、先生の過去作や他の作品と比べてもコンセプトが非常にユニークで面白いです。

はたして、天才は集団の中で創造性を発揮できるのか?

会社やチームに、天才の理解者・共感者は現れるのか?

「ゲーム作り×お仕事漫画」の革命となる『虹色ゲームメーカー』の、今後の展開に注目しましょう。