『さびレズ』作者が描く『一人交換日記』は、コンプレックスを肯定されることの喜びを教えてくれる名作
万人のハートに届く魂の叫びみたいな漫画が話題です。その魂の叫びが凄すぎて、マンガ新聞のレビュアーもついつい立て続けにレビューを書いてしまうほど!(特に裏金を頂いているわけでも何でもありません!たまたま作品がかぶり、私がスピード感で負けたのです…!)
そんな衝撃作が、永田カビ先生の『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』です。
この作品、大変センセーショナルなタイトルですが、決してエロ漫画ではありません!
作者の永田カビ先生は、高校卒業後、大学を半年で中退。うつ病と摂食障害を患い、バイトもまともにこなせない日々。心身ともにボロボロになっていた頃から、少しずつ自分を取り戻して、漫画家として社会に立つに至るまでの10年間の出来事を描いたコミックエッセイなのです。
『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(永田カビ/イースト・プレス)より引用
そして、永田先生が苦しみから脱却するための大きな一歩、それがレズ風俗だったのです。
『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(永田カビ/イースト・プレス)より引用
何故その一歩がレズ風俗だったのか。この経験は永田先生にどのような変化をもたらしたのか。是非、本誌を手に取ってお確かめ下さい。この作品、私にとって途中までは ただただ驚愕の連続でした。
167センチで38キロ、傷は治らずヒーターで低温やけど。しかも、その状態を「嬉しい」と感じる心理状態。
『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(永田カビ/イースト・プレス)より引用
他にも、発狂しそうな過食状態や、漫画家デビュー後も頭の中身がこぼれるようで文章が読めなくなったりと、どれもこれも私にとって、(本当に幸いなことに)未経験・未発想・想像もできないような出来事ばかり。このようなトラブルを抱えた人の苦しみが未経験の人にも痛いほど伝わってくるという意味でも、この作品は本当に凄い。
と、途中までは割と「未知の出来事に触れる感じ」として客観的に読み進めていたのですが、突然、ハートにガッツリ刺さってきたページがあったのです。
『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(永田カビ/イースト・プレス)より引用
あああ分かる!分かります!
私は漫画を描く能力は皆無ですが、文章を書くことでコンプレックスを整理整頓し、それを人様に晒すことでバランスを取る感じは超分かります!!
例えばこんな感じです。私は女性です。しかし、女性なのに、女性なのに、
靴のサイズが27〜27.5センチなのです!!和田アキ子さんが26.5センチ、深田恭子ちゃんが26センチ。自分よりも足が大きい女性に いまだかつて出会ったことがありません。(女子バレーボールの渡嘉敷 来夢ちゃんが、身長193センチで28センチなので是非お会いしたい)
大きい靴専門店にすら、殆ど靴は無い。女性誌の靴特集の記事は読んだことすら無い。完全にメンズサイズなので、男の人と靴を並べても、どっちがどっちの靴なのか第三者には分からない。
だいぶコンプレックスなのです。
しかし、ある時ブログに足が大きい事で発生したトラブルを書いてみたところ、結構な反響をもらったのです。どれくらいの反響かと言うと、最終的に足が大きい女性に性欲を覚える殿方の集まるサイトで紹介されたほど!
これ、とっても嬉しかったのです!自分の力ではどうようもない身体的コンプレックスが、表現の仕方によって、こんなに人様に(色んな意味で)喜んで頂けるなんて!!なので、永田先生の先ほどのページが、思いがけず深くハートに刺さったのでした。
かなり変な例を出してしまいましたが(永田先生、ごめんなさい!)、コンプレックスに感じていたことを誰かに肯定される喜びは、大なり小なり身に覚えがある方も多いのではないでしょうか。
「レズ風俗」に行くことで大きな一歩を踏み出した永田カビ先生ですが、いまもなお、様々な苦しみを乗り越えようとされております。
そんな様子が手に取るように分かる作品が、pixivコミックで連載されていた最新作『一人交換日記』。
自分から自分への交換日記。なんとも言えぬ孤独な響きではありますが、永田カビ先生の冷静な自己分析が子気味良く展開する かなりぶっといコミックエッセイとなっております。
貯金ゼロからの一人暮らし、そして途中には心身のトラブル。完全に、『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』の続編と言える作品です。自分との対話を公開しながら少しずつ前進する永田カビ先生の生き様を、時に客観的に、時に首がもげるほど頷きながら、今後も楽しみに拝読していきたいと思います!
ちなみに……
私の足の大きさ武勇伝を語ると一晩かかりますので、以前取材を受けたこちらの記事をご覧ください。(Uが私です)
>>足が大きい女性あるある 27.5センチの女性、悲痛の叫び
WRITTEN by 上原 梓
※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
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