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理不尽な世界で真剣に生きる様が、なぜか笑えてしまうダークファンタジー『ドロヘドロ』

こんにちは。今回ご紹介するのは、2年前に18年間の連載を終え、待望のアニメ化が実現した『ドロヘドロ』です(Netflix等でも観られます)。

ちなみに『ドロヘドロ』は18年間、4誌に渡って連載をしていました。全23巻まで出版されています。

そんな根強い人気を誇っていた『ドロヘドロ』の魅力をお伝えしたいと思います。

ドロヘドロあらすじ

まずは、『ドロヘドロ』を全く知らない方のためにのあらすじを。

『ドロヘドロ』には魔法が使える魔法使いの住む世界と、魔法が使えない人間の住む「ホール」が存在します。魔法使いの中にも魔法の強さによって格差がありますが、ホールに住む人間は、魔法使いの練習台にされる実験動物のような扱いを受けています。

主人公は、ホールに住むトカゲ頭の怪力男「カイマン」。カイマンはホールに来る前の記憶を失っており、トカゲの頭になる前の自分の顔も知りません。『ドロヘドロ』は、トカゲ男のカイマンが様々なバトルを繰り広げながら、自分の頭と記憶を取り戻すお話です。

とにかくグロかっちょいいキャラクターデザイン

語り始めればいくらでも語れてしまうのですが、『ドロヘドロ』の魅力をギリギリまで絞ると、2つあると思います。まず、ひとつはキャラクターデザイン。

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魔法使いの「煙ファミリー」のみなさん。

主人公の頭がトカゲ、という時点で心鷲掴みなのですが、『ドロヘドロ』に登場する魔法使いはみんなマスクを被っており、それがぜーんぶグロかっちょいい。カイマンの顔にも負けないインパクト。

見た目のデザインだけではなく、魔法使いによって異なる魔法も魅力。生きたまま体をバラバラにしてしまう魔法や回復魔法もあれば、ちょっとした衝撃波を打てるだけのショボい魔法も。

また魔法を使えない人間たちも、魔法使いに実験台にされたことで顔に縫い目があったり、見た目は子ども頭脳は中年であったりと、かなりの個性が。

そんなキャラクターたちがぞんぶんに生かされながら、ストーリーが進んで行きます。

「笑えるか笑えないか」が価値基準の悪魔にふりまわされるキャラクターたち

そして『ドロヘドロ』のもうひとつの魅力が「悪魔」の存在。悪魔は魔法使いの上位に存在しています。数少ない選ばれしエリート魔法使いが修行を積み、試験に合格することで、悪魔になることができます。

悪魔は陽気で、どんな時でも遊び心を忘れない楽天的な性格を持ち、「笑えるか笑えないか」のみを基準としており、とにかく自己中心的。

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悪魔の親玉「チダルマ」さん

人間や魔法使いたちがどんなに必死に戦おうが、自分の大切なものを守りたがろうが、悪魔の前では大切なのは「笑えるか笑えないか」のみ。その笑いの基準ももちろん悪魔基準。

人間と魔法使い、魔法使いの中にも力の格差がある中で、そんなすべてのヒエラルキーを簡単に覆す悪魔。その潔いほどの悪魔の気まぐれを中心に回るのが『ドロヘドロ』の世界。

『ドロヘドロ』では激しいバトルやグロテスクな描写もありながら、それでもなぜかクスッと笑ってしまいます。シリアスなストーリー展開が続いても、どこかで「笑える」ところを探してしまいます。

それはきっとこの「悪魔の哲学」が一貫して『ドロヘドロ』には流れているからで、それが『ドロヘドロ』を唯一無二の漫画にしていると思います。(もしかしたら、私たちの現実世界にあるどうにもならないことも、それも全部悪魔の仕業だと作者の林田先生は考えているのかもしれない……)

これからドロヘドロを読むあなたへ

画像ではわかりませんが、『ドロヘドロ』の単行本は装丁がうろこ状にボコボコしたデザインで、めちゃくちゃお洒落です。ぜひ触感でも漫画を楽しみくださいませ。

ゴリゴリのファンタジーで、バキバキのバトル漫画でありながら、心は消耗しない。

そんな『ドロヘドロ』はリモートワークでこもってしまい、孤独になりがちな今、ぴったりな漫画だと思います。そしてドロヘドロの一番の魅力……

それはまだ……混沌の中。

それが……『ドロヘドロ』!

(言ってみたくなるセリフナンバー1を、言ってみたかっただけです)

WRITTEN by 本村もも
※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
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