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とっても『大きい犬』が教えてくれる、当たり前な幸せ

こんにちは。今回は『大きい犬』をご紹介したいと思います。

『このマンガがすごい!2018』(宝島社)オンナ編 第9位にランクインした、スケラッコさんのマンガです。表題の『大きい犬』ほか、全7編を収録した作品集で、その名の通り大きい犬が出てきます。

大きい犬と、犬語がわかる高田くんの日々

大きい犬は、二階建ての家くらいの大きさがあります。少食で、飼い主はおらず、おそらく柴犬に近い犬種。大きいけれど存在感がとても薄く、町の人は気にも留めない存在。そんな大きい犬のいる町に、犬が大好きで犬語がわかる、人間の高田くんがやってきます。

その日から犬の言葉も人間の言葉もわかる高田くんを介して、大きい犬と町の人たちの交流が広がっていく……というわけではなく、高田くんと大きい犬は毎朝、毎晩ちょっとした挨拶を交わすだけ。ときどき魚肉ソーセージを差し入れしたり。

そんな日常を続けていたある日、突然大きい犬は姿を消してしまいます。「自分のせいだ、毎日話しかけて本当はウザかったのかもしれない……」と悩む高田くん。

スケラッコさんの描く、ファンタジーな世界と普遍的な幸せ

大きい犬というキャラクターは、非日常的でありながら、高田くんと大きい犬の織りなす日常は、私たちと何も変わりません。「迷惑だったかな?」と悩む高田くんの姿は、新しい人と出会ったあと、「自分の話ばかりしてしまった気がする……」と反省する私と同じです。

表題の『大きい犬』以外の作品も、実は七福神のえびすさまだったおじいちゃんや、気候変動で地球に住むことが難しくなり、地球そっくりなトーイ星へ人々が移り住むようになった未来の話など、設定はファンタジーな世界観が広がります。

だけど、どんな世界でも、そこに描かれているものは決して派手ではない、私たちと同じ普遍的な悩みや、幸せ。

どこかにいる大きい犬に会いたくなる、読後感がとても心地よい作品です。(その前に犬語の勉強をしなくては)

WRITTEN by 本村 もも
※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
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