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思草

思えば身の回りには喫煙者がちらほらいて、
手を出すのは時間の問題だったのかもしれない。


この前デヴィッド・フィンチャーの『ドラゴンタトゥーの女』を
3回目だろうか、アマプラで観た。

とても好きな映画の一つだ。
この映画を既に観た方は様々な感想をお持ちだろうと思う。

レビューサイトでも上位レビューたちは賛否両論。
逆に高評価しかないものは少し疑ってかかってしまうのは私の性なのか。

記者である主人公が未解決事件に少し癖のある女と共に挑むという内容で、私はラストシーンが好きすぎてそのために観ているといっても過言ではない。

しかし私は今日その話をしに来たのではない。
この映画、数ある映画の中でもタバコのシーンがあまりに素敵だと私は思うのだ。


以下、作中シーンの説明です。



主人公たちがやっと元の生活に戻っていこうとする中、ルーニー・マーラ演じるリスベットは悪人であったヴェンネルストレムが違法に稼いだ金の在処を突き止める。

彼女はダニエル・クレイグ演じるミカエルにお金を借りるのだが、それは自分の身元を偽りその金を自分たちのものにするためだった。

その金額は日本円で約70万。
ぽん、と渡せる金額ではないがリスベットは彼の口座にはそのお金があることを知っている。

彼はただ一言OK、とだけ言い、彼女もOK、と返す。

彼は"You wanna coffee?"とコーヒーを勧め、
返事を待たずに彼はコーヒーを買いに行くのだ。

場面は一転し彼女の暗躍が始まる。

服を買ったり金を動かしたり、彼女の動きは様々だ。

途中滞在したホテルのバルコニーでタバコを吸う彼女。
顔は真っ暗で一切見えないが、火をつけるその瞬間だけ一瞬彼女の顔が写る。
タバコの火が灯る中、彼女はフーッと白い煙を吐く。

その後何もかもを終わらせ電車に乗った彼女は、
もう無用の長物となった鬘を取り、デッキへと向かう。
タバコに火をつけ窓を開ける。

鬘を窓の外へと捨てて、一服。
同じ画角には禁煙のマークが。

タバコを吸っているのが正面から映し出される。

そして冷酷で無表情だった彼女が安堵の笑みを浮かべるのだ。



私は上に書いたタバコのシーンが非常に素敵だと思う。
何がどう素敵なのか、表現できる語彙を持ち合わせていないのが非常に悔しいが、素人目線からしてもこのカットは非常にこだわって作られているのではないかな、と感じる。

これ以外にもライターと煙草を買って一本取り、火をつけて残りの煙草が入った箱をごみ箱に捨てるシーンなど煙草に関するシーンは沢山あって、監督は煙草を撮るためだけにこの映画を作ったと言っても過言ではないだろう。いや過言かもしれない。

しかし数あるシーンの中でもこのシーン、そしてラストのシーンだけでも見る価値はある。私はそう思っている。

実際この記事を書くためにラストの10分ほどを何度も見返した。
それだけこの映画の魅力は最後に詰まっていると言えるだろう。



煙草の意味とはなんだろうか。
私は一種の自傷行為に近いのではないだろうかと思う。

最近のnoteで私は簡易的に自分を"殺して"きた。
それと同じように煙草というのは今の延長線上にある未来の自分を"殺す"行為なのではないだろうか。

自分という存在を定期的に"殺して"やることで私は生きながらえている。


いつかこの欲が現実にまで入り込んで
本当に自分を殺してしまわぬように。







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