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[Live Review] Dimmu Borgir EUROPEAN TOUR 2020 : LONDON SHOW

[Photo/Review by Marina Tashima]

2018年に大作"EONIAN"を発表し世界ツアーを行ったノルウェーのシンフォニックブラックメタルバンドDIMMU BORGIR。

Summer Breeze 2019でのメインステージがあまりに素晴らしく、その光景が忘れられなかった著者。その時はヨーロッパのフェスティバルならではの事情でステージ前での撮影ができなかったため、次こそはという思いがあった。そして今回のイギリス滞在に合わせて彼らの2020年最初のヨーロッパツアー、その初日公演へと足を運ぶことに。


18時オープンの会場に19時過ぎに到着した頃には既に多くの人が。ソールドアウトはしていないと聞いたが、2階の指定席は全て完売しており、フロアもメインのDIMMU BORGIRが始まる頃には8割ほどが埋まっている状態だった。前座のアメリカのWolves In The Throne Room、サポートのamorphisがそれぞれライブ達者ぶりを見せつけ、21時頃からいよいよメインのDIMMU BORGIRのショーがスタート。


最新アルバムより一曲目のThe Unveilingからショーがスタート。青白い光とスモーク、お香の香りと蝋燭の仄かな灯の中、機械音のような曲の出だしに合わせメンバーがゆっくりとステージに登場。

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最後にゆったりとした歩みでステージ中央に現れたのはVo.Shagrath。厳かな雰囲気のコーラスの中、曲に合わせて手を掲げ、逆の動きで十字を切るその姿にまず目を奪われる。派手な動きこそないものの、その一挙一動から目が離せないほどの圧倒的なカリスマ性が彼にはあった。

まるで儀式のような始まりから、そのままEONIANのアルバムの流れで2曲目はInterdimensional Summit。終末を告げるような鐘の音と共に音と光が停止する演出が素晴らしい。

その左右に構えるのはギタリストのSilenoz、Galderの2人。

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こちらも派手な動きこそないが、細かく正確に音を刻み続けるSilenozと、時折ソロのリフを刻みながらファンに対し笑顔を見せながらアピールし煽るGalder。2人の対照的なパフォーマンスがまた印象的だった。

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大柄なベーシストのVictorはドラムのサイドに控えている場面が多いながらも、時折前に出てきて存在感のあるプレイを披露。

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2007年リリースのアルバム"In Sorte Diaboli"からThe Chosen Legacyが始まるとクラウドサーフが大量に発生、Shagrathのテンポの良いシャウトに合わせ、フロアからも一斉に拳が上がる。

その全ての演出が違う曲達を、巨大なドラムセットで圧倒的な手数足数を披露し支えるドラマーのDaray。夏のフェスティバルでも感じたことだが、とにかく彼のドラミングが巧い。ハイが突き抜けるようなインパクトのある出だしから地を這うようなメロディまで、全てを叩き分けていて非常に技巧派。

オーケストラの音とコーラスが一層際立つGatewaysでは更に大きなコール&レスポンスが。もちろんオーケストラ部隊を帯同させている訳ではないのでこれは同期なのだが、DIMMU BORGIRのショーは何と言ってもこの洗練された完成度と世界観。指先の動き一つすら選び抜かれた演出のように感じるShagrathの動きと圧倒的な存在感、音の粒の揃い方、ライト/スモーク/小道具一つ一つが全て計算し尽くされたかのようにマッチし目と耳の両方の感覚を支配してしまう。完璧、という言葉がふさわしい、説得力のあるステージなのだ。


『2020年、1stアルバムのリリースから25周年。そんな年を皆と共に過ごせる事にとても感謝しているよ。そしてその最初のロンドン、温かく迎えてくれてありがとう。今年は…そうだな、半分は勿論世界中をツアーして回るし、後半は新しいアルバムに取り掛かるよ』

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Shagrathのその言葉に会場内からは発狂気味に響く歓声が。

Summer Breezeの時も思ったが、厳かな雰囲気を貫き通すだけでなく、こうしてファンに対して感謝の意を述べたり時折気遣いを見せる彼のMCにはとても好感が持てる。久しぶりのライブだからか、あの独特のしゃがれ声ではなく、一瞬綺麗な低音の地声が混じっていたのには少し笑ってしまった。

そこからバンド名を冠したDIMMU BORGIRを披露、そこからノイズと呪詛が混じった儀式めいた1曲Puritaniaが続くと、オールドなファンが拳を上げ叫ぶ。この曲はライブでの迫力が音源を軽く凌駕しているので、楽しみにしていた1曲でもある。

そこからÆtheric、そして名曲Progenies of the great Apocalypseと続きまるでオペラの大団円を見ているような光景が広がる。
これまで様々なブラックメタルのライブを見てきたが、間違いなく彼らのショーはブラックメタルのファンにも純粋なメタルファンにも受け入れられる素晴らしさがあり、多種多様な客層が楽しむ光景がこのロンドンでも見受けられた。

そして再び、ファンに対してバンドへの多大なるサポートに深く感謝の意を述べ、ステージを共にした2バンドの名前を呼びShagrathが感謝を告げる。少し明るくなった照明の落とされたステージでは、メンバーが各々胸に手を当てたり拍手をしたりと、其々が感謝の気持ちをファンに対して表現している姿も印象的だった。

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アンコールはなく、会場が割れんばかりの大歓声と拍手の中、全てのメンバーがステージ前方へと現れ感謝の気持ちを表し、一列になって深く頭をさげる場面も。その中で最後までKeyのGerliozとVictorは一人一人に視線を合わせて時間の許す限り残って感謝の気持ちを伝えていた。


もはや別格の存在とも言えたDIMMU BORGIRのショー。
バンドという括り、ジャンルの壁を超え、彼らの音楽は芸術の域に達していると改めて感じた公演だった。

彼らの音楽性がブラックメタルか否か、と厳格なブラックメタルファンの間では度々議論になると聞いたこともあるが、その独特な宗教観を持たないメタルファンにも親しまれる一つのジャンルを確立している確かな存在であるとも思う。

また、当日会場についてみたところ、こちらの関係者からの手配がうまく行き届いていなかったにも関わらず、1人の日本人の話を聞き入れて撮影の権利を与えてくれたSilenozと関係者の皆様にも多大なる感謝を。バンドが大きくなればなるほど、排他的な風潮が見受けられるヨーロッパのシーンで、この対応には驚くばかりだった。ほんの些細なことかもしれないが、こういった人柄がステージの上でも滲み出ているのだろう。
彼らが人々に愛されてやまない理由の一つに触れた気がした。

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[SET LIST]
01 - The Unveiling
02 - Interdimensional Summit
03 - The Chosen Legacy
04 - The Serpentine Offering
05 - Gateways
06 - Dimmu Borgir
07 - Puritania
08 - Ætheric
09 - Council of Wolves and Snakes
10 - Progenies of the great Apocalypse
11 - Mourning Palace
12 - Rite Of Passage





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