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『会話』1〜3


「ねえ、誰も傷付かないことばってなんだと思う?」
「え、クイズ?」
「ううん。」
「えっと、ハンバーグとか?」
「それ自分が好きな食べ物でしょ。」
「たしかに。楽しい、とか。」
「楽しいと感じられないときにそのことばを聞いたらどう思うかな。」(今私は楽しくない)
「うーん、だったら、、、えーっと、、、愛、とか?」
「愛されたことないと思ってる人が聞いたら傷付くかもしれないよ。」(愛されたことない)
「そうか。」

わたしがこんな質問をすることを、彼は面倒くさいと思っているのだろうか。おもしろいと思っているだろうか。楽しいと感じているだろうか。どう見てもおもしろそうにも楽しそうにも見えないけれど。彼はこんな質問をするわたしとの時間を無駄だと感じていないだろうか。

「俺、思うんだけど。“誰も傷付かないことば”っていうのも、なんか誰かを傷付けそうだよね。」

わたしは、こんなことをさらっと言えてしまう彼といるのが、とても心地よい。


「ねえ、わたしが変わったらどうする?」
「どんな風に?」
「どんなでも。」
「うーん、そうだね。俺にはあんまり関係ないかな。」
「冷たいね。」
「もし、嫌だなって思ったら離れるかも。」
「もっと冷たいじゃん。」
「最悪な形は、変わったことを責めることだよね。」

わたしが変わっても、彼は離れない気がした。


「小さい頃にさ、大人になったら克服できると思ってたのに、何も出来てないよね。」
「例えば?」
「ほら、人見知りとか、自分の思ってることをはっきり相手に伝えるとか、あとは、おばけが怖いとか。」
「最後のだけ何か毛色が違うけど。」
「それで思ったんだよね、勝手にどうにかなることって無いと思うの。それにね、出来ないことが悪いってことでも無い気もする。」
「ピーマンは、知らない間に克服できてるわ、俺。あ、あれだなあ、やっぱ派手な服着て外歩くのは無理ね。」

彼はわたしの意見を否定しない。「でも」を言わない。

でも、新しいことに気付かせてくれる。

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