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スカイクロラシリーズを読んだり

※ネタバレ考慮しません

スカイクロラにおける草薙水素とは何者か

まずは僕は誰かと言うことについて。
私は以下のように考えています。今更つまらない話だけど前提として述べない訳にはいかない。

スカイ・クロラの僕=カンナミ
ナ・バ・テアの僕=クサナギ
ダウン・ツ・ヘブンの僕=クサナギ
フラッタ・リンツ・ライフの僕=クリタ
クレィドゥ・ザ・スカイ=クサナギ(エピローグはカンナミ)

そしてカンナミ=クサナギの別人格と考える。僕は誰問題で最も意見が分かれるのはクレィドゥの僕?でもカイにとって大切な人物は作中クサナギスイト以外にあり得ない。迷いようがない。
私は細かい時系列の整理は行っていない。キルドレの一人称は信用できない。点で拾って1番点数の高い可能性を正とすることにした。つまりスカイ・イクリプスの三人称による事象は基本的に事実であると認識している。
クサナギミズキはスイトの娘ではなく妹。ミズキの言うことは信用できる。作中スイトの娘はキルドレあるとも描画されている。ミズキはドール・グローリィで大人になったのでキルドレではない。
チータは能力のある嫌なオッサン(きっと顔も良いに違いない)。スイトが一時夢中になったが、スイトにとって生涯意味のあるキャラクターではない。

ではスカイ・クロラにおけるクサナギスイトとは何者か。
カンナミの肉体はクサナギスイトである(と私は考える)。基地の人間はカンナミ=スイトであることを了解している。カンナミの一人称からはスカイ・クロラにおけるクサナギスイトは完全に独立した人格/肉体を持っているように認識されている。また第三者の反応も自然。そこにクサナギ氏が存在するように皆振舞っているように見える。

クレィドゥのエピローグではソマナカに「偽物では」と語られる。私にとってソマナカは嘘を語る人間ではないが真実が見えているとも言い難い。
仮にスカイ・クロラに登場する「クサナギ氏」が偽物だとすると

・カンナミと同時に飛行機に乗る事はない
・ミズキが懐いている
・スイトの記憶を生々しく語る

と言った点に若干の引っかかりがある。それでもファイトクラブのように2つの人格を1つの体で演じるには無理のあるシチュエーションが多いように感じる。何よりもその状況をミツヤが許容できるように思えない。よって私はスカイ・クロラにおけるクサナギスイトは何者かが演じる偽物の人物と考える。


と書いてある2021年11月頃に作られた下書きを発見した。
最近またちょっとシリーズを読み返したりしたので以下追記して投稿する。


草薙水素の感受性について

スイト外キルドレは全般的に感受性及び共感能力が乏しい人物として書かれる事が多い(押井守版の影響も大いにある気がする)。シリーズはスイト一人称で進むストーリーが多い為、ことスイトに関してはそれをより強く感じる。
ただし、それは感情の起伏が非常に低調であるというだけで感情がないわけでも本人が共感を否定しているわけでもない。特に対フーコに対しては彼女が何を理由に悲しみ喜ぶのかを(理解しきれないなりに)慮る描写が多い。また、スイト自身はこう思った、もしかしたら彼女も同じように感じたかもしれないといった描写があり(確か、グレイドゥ)、スイトの中に共感は起こり得るという前提が極自然に描写されていた。
彼女彼等は先天的に感情が欠落しているわけではなく、そうなるように教育、訓練、 "治療"されたのであろうと想像する。またキルドレは長期記憶に欠陥があるため自我が弱く自身の感情に気づきづらい。

(飛行機の描写にほとんど興味のない私にとって)スカイ・クロラシリーズの魅力は登場するキャラクターのエモーションであると感じる。シリーズを通して物語の印象はうす靄がかって静かであるが、登場するキャラクターは皆必死で切実であるように思える。
空を飛ぶ事を愛し、その他への興味が希薄であるキルドレが何故地上で自殺するのか、それを想像するのがこのシリーズの一つの楽しみ方ではないでしょうか。




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