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『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』ファン・ボルム

読書記録です。
いま、異常に現実逃避欲が高く、現実逃避したくなると読書に没頭しやすく、読書速度も上がります。

というわけで、初の韓国文学に手を伸ばしました。

『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』
ファン・ボルム 著 / 牧野 美加 訳

<あらすじ>
ソウル市内の住宅地にできた「ヒュナム洞書店」。会社を辞めたヨンジュは、追いつめられたかのようにその店を立ち上げた。書店にやってくるのは、就活に失敗したアルバイトのバリスタ・ミンジュン、夫の愚痴をこぼすコーヒー業者のジミ、無気力な高校生ミンチョルとその母ミンチョルオンマ、ネットでブログが炎上した作家のスンウ……。
それぞれに悩みを抱えたふつうの人々が、今日もヒュナム洞書店で出会う。
新米女性書店主と店に集う人々の、本とささやかな毎日を描く。

集英社HP  紹介ページより引用

とにかく心が落ち着くような、あたたかい小説が読みたいと思い、本屋さんを彷徨いていたところ、外国文学棚で目についた作品。
韓国文学って、お隣の国なのになんだかんだ読んだことがないなぁと。表紙からして、すでに物語のあたたかさが滲み出ているのですが、帯に「完璧な人生なんてないけれど、「これでいい」と思える今日はある。」とあって。今のわたしが欲している小説だなと思って購入しました。普段は保管場所の関係もあって、文庫本を買うことが圧倒的に多いのですが、とにかく本に救われたくて、現実逃避模したくて、今回は選びました。

読んでみたら、思っていた通りにあたたかい物語でした。
登場人物はみな、何かしらの悩みや葛藤を抱えているのだけれど、この書店に集まる人々との交流を通じて、その悩みに向き合い、自分なりの答えを出して進んでいく、あるいは進まずに別の道を選んだりする、という物語。
確かにみんな、支え合ってはいるのだけど、がっつり寄りかかったり、がっつり介入していくわけではなくて、このヒュナム洞書店の中で、そばで静かに、でもあかるく支え・支えられしている雰囲気がとても良くて。

わたしの人生もいま全然完璧ではなくて、むしろ自己肯定感爆下がりの状態。だけど、この本を読んで、時には休みながら、自分の人生を進んでいくのもいいのだな、と思いました。
壮大な目標を打ち立てて、それに向かって努力するのももちろん大切で素晴らしいことだけど、そればかりだと人間はつかれてしまう。時には、自分のペースで、自分の周りの人たちを大切にしながら、目の前のことをこなしていく。これも立派な人生なんだと。どんなやり方で、どんなペースで進んでいくのかは、自分で決められるし、決めていい。

「人間だから、うまくいかないことや悩みもたくさんできるけれど、決して決めた道は間違いではないのだよ」
「自分一人で頑張っていると、自分だけって思うけど、このヒュナム洞書店の人々の話を読むと、表面上ニコニコしてたり何もしてない考えていないように見えても、人それぞれ何かしら悩みがあって、みんな向き合っている、ひとりだけではないよ。みんな似ている」
と背中をさすってくれるような物語だった。

とても良かった。
いま、この本に本屋さんで出会えて、いまこれを読めたこともすごく良かったなぁ、と。

つかれた時にはまた手にとって、このヒュナム洞書店に訪れる客の一人として、この本の物語に浸りたいなぁ。

韓国文学、初っ端からこんな素敵な作品に出会ってしまったけど、こんなに素敵なんだったら他の作品も読みたいな!
『アーモンド』とか、前から本屋さんでよく見るから、つぎ買ってきたい!!

おわり

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