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つくものがたり

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ひとつひとつ、積み重ねなにとする
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2022年11月の記事一覧

75. ミッドナイト・パレード

 わたしは確かに、ひどく疲れていた。  肉体的にはそれほどの疲労ではないはずだけれど、精…

tmk
1年前
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74. はじく

 ロンドンの子どもは、羊はじきをして遊ばないのである。  と、言うことを最近知って驚いた…

tmk
1年前
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73. ロンドン在住

 怖い話?  内臓とかの話は大丈夫? 事故で……ああ、違うの。  え、幽霊?  君が住んで…

tmk
1年前
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72. 異臭

 家にいると、何かが臭う。  日に日にその悪臭が、強くなっているように思う。古いアパート…

tmk
1年前
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71. 占いの結末

 ある占い師が居た。  ヒトとしては大変腕が良く、その気になればどんな未来も過去も、ぴた…

tmk
1年前
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70. 迎え

 雨が降ってきたので駅まで迎えにいったのだが、彼女は帰ってこなかった。  それは当然のこ…

tmk
1年前
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69. ヒーロー

 霊は見えないけれど、『見える人』はよく見かける。  僕は霊を見るための視力がないので、憶測に過ぎない。話しかけたところで返事してもらえる状況とは思えないし、その余裕が仮にあったとしても一般的常識人ならごまかすだろうとも思う。でもほぼ、確信している。  怪異に出会ったのでもなければ、普通の人は何もないところを凝視して悲鳴を上げたりしないし、虚空を指さして怯えたり、突然人を押しのけてその場から逃げたりしないだろう。  錯乱状態である可能性もあるが、いくらロンドンでもそこまで薬物

68. 一部

 小学校最後のサマーキャンプで、出てきたサンドイッチに耳が挟まっていた。  湖に遠足へ行…

tmk
1年前
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67. のうのうと暮らす憎き

 別れた妻との娘が訪ねてきた。  家を出て行った元配偶者からは、何年も便りがないままだっ…

tmk
1年前
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66. 人の皮を被るなにか

 人間の皮を被るなにかの話をしよう。  僕は七人兄弟の下から二番目なのだが、一番上の兄と…

tmk
1年前
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65. 影渡りの思い出

 こうして話を聞いていると、多くの人達が怪異をあまり良いものと捉えていないように思います…

tmk
1年前
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64. 覚書

覚書のこと。 1. サント・パンクラス駅にはけして近づけない、前を歩く人がいる。例えばス…

tmk
1年前
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63. 幽霊屋敷

 わたしの家は幽霊屋敷と呼ばれている。  某情報投稿サイトで『ロンドン、アクセス便利な幽…

tmk
1年前
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62. メガネをかけて

 視力が悪い人で、外国に住んでいるとわかってくれると思うのだけれど、合うメガネがない。  結局これは私の財力の問題であるのかもしれないけれど、チェーン店で選んだレディメイドの縁では、骨格構造的に合わないのだ。鼻がひっかからない。耳もちょっと、位置が高いような気がする。  それで困っていたら、偶然通りかかったがらくた市で、古いメガネを見つけた。  古い型なのははっきりしているが一点物であるらしく、製造年は不明のメガネで、鼻梁を支える部分がない。最近なら細くあれ軽くあれという傾向