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多摩花賣所物語

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東京の西のはずれのある街でビルの軒下から始まったちいさな花屋のものがたり。 笑いあり、涙あり、ヘッポコで失敗だらけの笑える話と全く笑えない話がてんこもりです。 初めはみんなひとり…
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#多摩花賣所物語

キムタクめ、女房に初めての花を買う

テレビで気象予報士が「数年ぶりの大寒波が来るので防寒をしっかりしてお出かけください」と朝…

縹 くも
2年前
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雪国の農家が挑み続ける花づくり 【前編】

[本記事は宣伝会議 第43期 編集・ライター養成講座の卒業制作として作成しています] 家庭需…

縹 くも
2年前
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花屋の花に隠れた物語  帰ってきたかぐや姫 【後編】

生まれたストーリーに光をあててほしい 「こんなポテンシャルを持っている芍薬は他にはない…

縹 くも
2年前
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花屋の花に隠れた物語  帰ってきたかぐや姫 【前編】

もうひとつの「雪国の農家が挑み続ける花づくり」 本記事は宣伝会議 第43期 編集・ライター…

縹 くも
2年前
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あめとつちとラナンキュラス

あめとつち  里山の古民家に到着すると、小さく「あめとつち」と刺繍された真っ白な刺し子の…

縹 くも
2年前
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「私のことを覚えていますか」

あとは店の灯りを落とすだけという閉店時に一人の男性客が現れた。 「私のことを覚えています…

縹 くも
2年前
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花屋に賽銭

夕方になって今にも雨が降り出しそうだった。 閉店間際の時間になりやっとひと段落した頃に背の高い紳士がスッとやってきて 「これ3本頂戴」 1本300円なので締めて900円+消費税 すると 「いやそれは悪いよ、それじゃあね...」 と言いながらポケットをごそごそ。 出てきたものは千円札に小銭がいろいろ。 「せめて受け取って」 多摩花賣所は路地裏ビルの3階で宣伝もせずに路上看板だけで13年も営業をしていた。0426 Spring Garden という名前のそのビルは1階入り口の両

来年の誕生日僕はいないので

うわ~、しあわせ。車のドアを開けるとスイートピーの香りが飛び出してきた。3月の卒業シーズ…

縹 くも
2年前
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これを奇跡と言わなかったならなんていう?

4歳の時私は死にました。 甲州街道沿いの商店街にあった我が家。通りを挟んで向かいの八百屋…

縹 くも
4年前
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世界のどこかには音楽が鳴り止まない国もある

ビルの3階にある花屋に来て「働かせて下さい」と言うんだから、よっぽど面白い子だなと思った…

縹 くも
4年前
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接待必勝法 〜粋なはからい〜

18時ごろ、 40代半ばくらいの男性がやって来た。 「あそこにある枝は何の枝ですか?」 見る…

縹 くも
4年前
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「誰が持つの?それ」と夫は言った

「それ誰が持つの?」 「私が持つわよ」 「そうだよね、それならいいけどさ」 「わかってます…

縹 くも
4年前
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最期の訪問客

卵焼きと山椒  馬場さん夫妻は再婚同士。60代も半ばだろうか。お二人で営業している小料理屋…

縹 くも
4年前
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そいつを言っちゃあおしまいよ

父の法事がある日曜日、結婚式とバレエの発表会の仕事が入ってしまった。 どうしてもと頭を下げられ、出かける前と終わってからの納品でなんとかなりそうだからということで、やむなく引き受けた。 腰の低い花嫁さんは「急に無理を言って申し訳ないです」と全面的にこちらの都合に合わせてくれ、なんだったら前日取りにきてもいいとまで‥ ウェディングブーケを前日とはいかないので、ちょっと早めの納品ということで対応させていただくことにした。 問題はバレエの方だった。 いかにも自分もプリンシパ