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多摩花賣所物語

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東京の西のはずれのある街でビルの軒下から始まったちいさな花屋のものがたり。 笑いあり、涙あり、ヘッポコで失敗だらけの笑える話と全く笑えない話がてんこもりです。 初めはみんなひとり…
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記事一覧

じぶんの居場所

二世帯住宅の母と息子 ジリジリと照りつける夏の日差しがようやく傾きだした。 商店街のモザ…

縹 くも
2年前
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キムタクめ、女房に初めての花を買う

テレビで気象予報士が「数年ぶりの大寒波が来るので防寒をしっかりしてお出かけください」と朝…

縹 くも
2年前
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雪国の農家が挑み続ける花づくり 【後編】

生まれたストーリーに光をあててほしい 「こんなポテンシャルを持っている芍薬は他にはない…

縹 くも
2年前
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雪国の農家が挑み続ける花づくり 【前編】

[本記事は宣伝会議 第43期 編集・ライター養成講座の卒業制作として作成しています] 家庭需…

縹 くも
2年前
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花屋の花に隠れた物語  帰ってきたかぐや姫 【後編】

生まれたストーリーに光をあててほしい 「こんなポテンシャルを持っている芍薬は他にはない…

縹 くも
2年前
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花屋の花に隠れた物語  帰ってきたかぐや姫 【前編】

もうひとつの「雪国の農家が挑み続ける花づくり」 本記事は宣伝会議 第43期 編集・ライター…

縹 くも
2年前
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あめとつちとラナンキュラス

あめとつち  里山の古民家に到着すると、小さく「あめとつち」と刺繍された真っ白な刺し子の暖簾が目に入った。玄関で靴を脱いで上がると、廊下の手前にはちゃぶ台が、その奥にはテーブルが一つあり、ふた部屋続きの和室にはゆったりとテーブルが配置されていた。畳の上で好きに寛げるのは昭和の頃を思わせてくれてなんだか懐かしい。「お茶はご自由にどうぞ」と書いてある。 客人は10人くらいだろうか。若い女性店主が一人で切り盛りしているので、そこは気長に自分の家のようにして食事を楽しんでくださいと

「私のことを覚えていますか」

あとは店の灯りを落とすだけという閉店時に一人の男性客が現れた。 「私のことを覚えています…

縹 くも
2年前
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花屋に賽銭

夕方になって今にも雨が降り出しそうだった。 閉店間際の時間になりやっとひと段落した頃に背…

縹 くも
2年前
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来年の誕生日僕はいないので

うわ~、しあわせ。車のドアを開けるとスイートピーの香りが飛び出してきた。3月の卒業シーズ…

縹 くも
2年前
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これを奇跡と言わなかったならなんていう?

4歳の時私は死にました。 甲州街道沿いの商店街にあった我が家。通りを挟んで向かいの八百屋…

縹 くも
4年前
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世界のどこかには音楽が鳴り止まない国もある

ビルの3階にある花屋に来て「働かせて下さい」と言うんだから、よっぽど面白い子だなと思った…

縹 くも
4年前
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接待必勝法 〜粋なはからい〜

18時ごろ、 40代半ばくらいの男性がやって来た。 「あそこにある枝は何の枝ですか?」 見る…

縹 くも
4年前
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「誰が持つの?それ」と夫は言った

「それ誰が持つの?」 「私が持つわよ」 「そうだよね、それならいいけどさ」 「わかってますから」 奥さんがミニバラの鉢を買い、バラの花も購入するとすかさずご主人がこう言ったのだ。 そのミニバラは小さかった。 「持ってあげて欲しいなぁ」とは私の心の声。 結局鉢はもう一つ買い足し更に増えてしまった。 「それ誰が持つの?」 また聞くご主人。 「ハイハイ、私が持ちますから」 「あ、そう」 ちょっとせつないなぁと思って聞いてしまった夫婦の会話。お会計を済ませるとご主人がサッと荷物