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私といくえみ綾

 私は小学1年生の頃から、別冊マーガレットを愛読書としていました。※通称”別マ” 

 別マは少女漫画ではあるけど、小学生の当時友達が買っていたのは「りぼん」や「なかよし」や「ちゃお」で、別マを読む私は周りより少しだけ大人かも、そんな気分になっていました。
 別マは私の漫画好きを加速させた大好きな作品が詰まってます!ラブ★コン、ストロボ・エッジ、アオハライド、君に届け、高校デビューなどなど好きな作品は言い尽くせない…毎月隅から隅まで読んでいました。アンケートを書くのにハマっていたこともありました。(懸賞が当たりやすいってのもあり…)毎月隈無くチェックしていた別マで私はいくえみ綾と出会いました。

いくえみ綾先生との出会い

 私がいくえみ先生を知ったきっかけの作品は別マ掲載の「爛爛」という作品です。あらすじは下に書きますね。

野々花町一丁目に住む双子の姉妹、あずきとちまき。ある理由により、あずきは他人に触らず、ちまきは決して帽子を脱ぐことはなく、2人とも学校にも行っていなかった。

そんな2人の唯一気の置けない存在は近所に住む従兄だけだったが、2人の家の隣に引っ越してきた琥珀のことが気になり始める。

Wikipediaより

 少し補足します。(ネタバレになるが…)中学生の双子・あずきとちまきはそれぞれ別の超能力をもっています。あずきは他人に触るとその人の心の中が読める、ちまきは空を飛べる。そんな2人は隣に引っ越してきた琥珀に何故か惹かれてしまう…という物語です。

 ファンタジー要素も含んだ作品だと思い、読み進めます。ですが、少年少女たちの恋愛模様というよりかはもっと奥深くにある人間の欲望を抉り出すような話なのだと気づきます。

琥珀の同級生の鹿の子に触ってしまったあずきが見た鹿の子の本音は母親に対しての不満や異性に対しての欲求(性欲)、女友達に対しての嫉妬など、これは別マに掲載していいのかしら…?と子どもながらに私は思って読み進めてたシーンもありました。他の登場人物たちも、言葉にはし難い心の奥の欲望が表現されています。

 これは私にとって衝撃的な出会いでした。少女漫画の捉え方が変わりました。

漫画家 いくえみ綾先生

 ここでいくえみ綾先生を紹介します。

  • 1979年活動開始(デビューは中学3年生!)

  • 代表作は「潔く柔く」「プリンシパル」(この2作は映画化)「あなたのことはそれほど」「G線上のあなたと私」(この2作はドラマ化)

  • 現在は「I日2回」「そろえてちょうだい?」「ローズ ローズィ ローズフルバッド」を連載中(私が把握しているものは…)

  • 8作品を同時進行していた期間がある

 40年以上のキャリアをもつ漫画家です。少女漫画というジャンルの漫画家でしたが、最近はジャンルレスな作品を生んでいます。でも実は近年に始まったわけではなく、ずっと前からいくえみ先生のストーリーでは「少女」の前にある「人間」が事細かに描かれていと私は思います。人間のもつ本能と理性、生と死、愛、それらが複数人の人間の間でねじれ絡み合う様子がどの作品でも描かれています。
 ストーリーに深みがあることはもちろんなのですが、漫画の大事な要素は絵ですよね!いくえみ先生の描く人物は本当に魅力的です。特に男の子がかっこいい!少女漫画に欠かせないポイントなので私が言うまでもないかもしれません。そのほかに年齢の描き分けが上手だと思います。お年寄りも子どもも違和感のない絵です。そして絵だけではなく、コマ割りも魅力的です。大胆で斬新なコマ割りが多いです。そこが飽きさせない一つのポイントだと思います。

いくえみ綾先生を追いかける

 私は「爛爛」を読んでからいくえみ綾という漫画家が気になり始めました。ですが、「爛爛」の連載が終了したあと、別マでいくえみ作品が登場することはありませんでした。(のちに分かったのは、「爛爛」はいくえみ先生の別マでの最後の連載だったということ…)私は本屋で背中にいくえみ綾の文字を背負っている本を探しました。そして1作品ずつ買っては読んでいきました。その中でも私のお気に入りを紹介します。

1 「I  LOVE HER」

あらすじ…転校してきた高校生の花。学校に行くと担任はアパートの隣人・新堂だった。

 ド定番設定の女子高生×教師のラブストーリー。たいてい教師はしっかり者でクールで大人で、ってキャラクターになりそうだけど新堂・通称新ちゃんはそうではないのです。もちろん高校生からみた大人の余裕は感じるのだけど、ルーズさや人間臭いところがあって、どうしても花ちゃんに特別扱いのような態度をとってしまう…大人たちからみると花ちゃんのことがかわいくてたまらないことはわかりやすくにじみ出てる…その新堂の特別扱いがグッとくるんです…いくえみ先生もキュンとする話をと思って書いたらしいです。

2 「トーチソング・エコロジー」

あらすじ…売れない俳優・迪。ある日高校の同級生・日下が隣の部屋に引っ越してきた。そしてその日を境に謎の少女の姿も見えるようになり…

 (ネタバレ含みます…)日下が引っ越してきてから見えるようになった謎の少女は親友・峻に姿を変わることもできました。峻は19歳で交通事故で亡くなっていました。迪としては大学に入り、峻と距離があったこともあり”すっきりしていないこと”がありました。そんな中、迪は俳優としてのチャンスに恵まれて、怖いくらい順調にキャリアを積んでいきます。その道のりには恵まれず伸び悩む人もいてキラキラとした世界で生きる人もいて、それぞれの考え方や生き方に触れる中で、自分が今何を大切にしないとで、その大切にする方法ってたくさんあるということに気づいていった…のかな…?いくえみ作品の良いところは答えが明確に出ていないところだけど、その分私たちに考えさせてくれるから好きなんです。

3 「太陽が見ている(かもしれないから)」

あらすじ…中学校で仲良くなった岬と楡。高校生になって2人でシェアハウスをして暮らすことになった。ある日、楡の幼馴染・日帆が現れ、3人は仲良くなった。

 男1人と女2人の友情物語…になればいいけど綺麗にはいきませんね〜 困難を乗り越えたという点では友情物語なのかもしれない。3人とも家族との関係に問題を抱え、そこをフォローし合う関係なのだけど、それが恋愛関係までいくと本当に相手のことを好きなのか?とこちらが疑いをもったり、逆にこれは恋愛にはしてはいけないという自制心が働いてしまうのかこちらが望む展開には一筋縄ではいかない…何なんでしょう?でもその上手くいかないというところがかなりリアルな気がしています。人生の中でする選択が全て上手くいく訳ではなく、通過点の選択もあるのだと思います。

いくえみ綾先生とのこれから

 いくつか作品を紹介しましたが、まだ魅力的な作品がたくさんあります。そして今尚、連載があるというのが嬉しいところです。ただいま連載中の「1日2回」は気になる展開です。

あらすじ…39歳のれみは、夫と死別し母と娘と3人暮らし。ある日隣に住んでいた同級生・季が離婚して戻ってきた。ふたりは小さいころから仲が良く、れみの夫・忠も含め3人は仲が良かったが、今はどちらもひとり。

 ただいま4巻まで発売中。今後の展開が気になるところです。今回はアラフォーがメインのお話になっています。ここに出てくる大人たちが抱える悩みもこれまでのいくえみ作品の人物が抱える悩みとは変わってきています。

 これまで数々の作品を生み続けてきたいくえみ先生ですが、私の欲を言ってしまえばまだまだいろんな話が見てみたいんです。これまで学園ものはもちろん、最近はバーテン、バイオリン、不倫、漫画家となんでも題材にできてしまう。どれも深みがあるのです。まだまだ読めたらいいなと私欲の塊のような言葉と共に締めたいと思います。

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