4/10(水):作品を作る②

あの日のことは一生忘れないだろう。
死が遠ざかった現代ではなおさら。

マイクロチップが生命維持装置の役目すら担う今では、適切なタイミングとやらを細胞にお知らせしてくれて、その人の最良な状態に身体を維持してくれる、らしい。らしいというのも、自分の身の回りにいる人が本当は何歳なのか、全く知らないから。
人口減少が進みすぎてクローン技術に手を出しそうになる直前にできたのが、細胞更新技術だった。その技術によって人類の老化が極力抑えられるようになり、人類は何百年と生きられるようになった。だから、自分以外の人がどれだけの年月を過ごしているのか全く分からない。
一方で、奇跡的に生まれた赤ん坊は生まれてすぐに病院預かりになる仕組みもできた。なぜなら、全ての人間はチップを埋められるから。父親も母親も、一切の情報が秘匿される。チップの指示通りに動くよう周りの「保護者」に教育される中で、両親についてのことは不必要な情報なんだって聞かされた。どうして必要ないのか教えられなかったけど、僕自身は興味なかった。どうせ両親も同じ教育をされているだろうから。
身体の最良な状態がどんなものなのか、僕はまだ迎えていないから分からないけど、周りの保護者たちは年をとるのを止めてしまったみたいだった。聞くところによると、園長先生は50年以上にわたって園長先生をしているのに、見た目がずっと30代後半から更新されないらしい。他の人たちも見た目の年齢に差はあれど、ずっと固定メンバーなんだとか。

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今日はここまでで。
おやすみなさい。