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徹底解説 | 東南アジアのEdTech

教育ニーズには遠く及ばず、東南アジアのオンライン市場は有望

フィンテックやeコマースに続き、オンライン教育は東南アジアで最もマネーが注がれるIT分野の一つとなっている。だが、東南アジアのオンライン教育市場は、まだ初歩的な段階にあると言える。統計によると、2018年~2021年上半期にかけての、東南アジアにおけるオンライン教育投資の43%はアーリーステージ(シードからシリーズB)に分類された。2021年、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムでは、オンライン教育への融資総額が過去最高を記録する見込みだ。理由として、総人口数と人口構造上のボーナス、ネット産業の発展、パンデミックが生活パターンを変えたことなどが挙げられる。中国ネット企業による東南アジアへの進出がブームとなる中、中国がオンライン教育で長年蓄積してきた経験は、現地の市場発展を加速させそうだ。

1. 人口、パンデミック、インターネットが東南アジアのオンライン教育の発展に寄与

世界的な教育シンクタンクHolonIQによると、世界の教育費の総額は2025年までに8兆米ドルに達する。オンライン教育の世界市場規模は、2020年の890億7000万米ドルから2027年には2852億3000万米ドルへと、年平均成長率18.1%で成長すると予測されている。数ある教育市場の中でも、東南アジアは、学齢人口、教育需要、ネット教育の面で利点があり、オンライン教育産業の次の大きな市場となりそうだ。

学齢人口の増加

シンガポール紙『ビジネスタイムズ』によると、東南アジアの約7億人近くの人口のうち26%が学齢期にあたる。しかも、過去5年間で、ASEAN諸国の人口は年平均1.2%と、0.6%の中国を上回る伸びを示す。また、人口増加が続く中、出生率の水準も教育市場の見通しを判断する上で重要な要素となってくる。 統計サイト「Statista」によると、2020年にはインドとASEANの出生率はほぼ同じになり、女性一人当たりの平均出産数は2.2人になる。このうち、ラオス、フィリピン、カンボジア、インドネシアはいずれも平均を上回る出生率だ。人口増加と出生率上昇というダブルで有利な条件により、東南アジアの学齢人口はさらに増加することが予想され、教育企業にとっては重要なユーザー層になっていくと見られる。

また、各国の平均年齢も、教育市場の需要見通しにおいて重要な役割を担う。2020年のASEANの人口の平均年齢は28.9歳に過ぎず、若者はeラーニングツールや技術的に高度な教育コミュニケーションメディアを受け入れやすい傾向にある、と投資調査プラットフォーム「Smartkarma」は指摘する。 このような人口構成のもと、職業訓練への需要も高く、成人向けオンライン教育·訓練業界のさらなる発展が期待される。

大きな教育需要

その一方、東南アジアの多くの国々では、教育への需要が満たされているとは言い難い状況だ。ASEAN諸国の平均識字率は94.9%以上に達するが、ラオスの58%、カンボジアの74%、ミャンマーの76%など、国によって大きな違いがある。このギャップは、東南アジアにおいて都市部と農村部の間で教育資源が不均等に配分されていることに起因する。デジタル技術を駆使したオンライン教育は、従来のオフライン教育の物理的制約を打破し、遠隔地の学生が質の高い教育を受けることを可能とした。

例えばインドネシアでは、何千もの島が教育資源を「分断」しており、それに止まらず遠隔地は教師不足に陥っている。同国は世界で4番目に大きな教育システムを持ちながら、世界の識字率ランキングでは最下位に近く、伝統的教育メソッドの改革が急務となっている。もしあらゆる地域の教師と生徒をつなぐオンラインプラットフォームがあれば、両者にとってより大きな利便性や価値を創造することができる。

コロナ流行でオンライン教育が急成長

2020年に始まったコロナ流行により、東南アジアのデジタル化が加速し、従来のオフライン教育からオンラインのオンライン教育へのシフトが進んだ。Google、Temasek、Bainが共同で発表した「東南アジアインターネット経済2021」レポートによると、コロナ期に成長が最も著しい2つの新興セクターがエドテックとヘルステックだった。

コロナ禍により、東南アジアの学校は閉鎖され、学生は自宅からリモートで勉強しなければならなくなった。学生や保護者にとっては、オンライン教育ツールを利用したり、オンライン家庭教師に頼ったりすることが主要な選択肢となった。従来のオフライン教育と比較すると、オンライン教育はテクノロジーとデジタル化に重点を置き、コンピュータのハードウェアとソフトウェア、そして教育の理論及び実践を組み合わせて学習を促進したのであった。その結果、オンライン教育企業の成長ポテンシャルは、コロナ期にさらに大きくなった。「ビジネスタイムズ」紙は、東南アジアだけでeラーニングアプリのインストール数が、2019年の600万回から2020年には2000万回と3倍以上に増えたと伝えた。コロナが常態化しつつある現在、学校閉鎖が再び起こる可能性があり、これは学生がリモートで授業を受けることが新たな日常となることを意味する。このような観点から、東南アジアのオンライン教育分野は今後も成長が期待される。

改善続くネット環境

コロナという原因以外にも、東南アジアでオンライン教育が成長するために必要な基本的要素はほぼ備わっていると言える。例えば、インターネットの普及率の向上やネットスピードなどがそれにあたる。「東南アジアインターネット経済2022」によると、東南アジアでは過去3年間でネットユーザーが1億人増え、ネットユーザー総数は4億6千万人に上り、インターネット普及率は75%を超えた。同時に、東南アジアのネット速度も大幅に改善した。世界的な通信事業者分析会社OpenSignalの2021年のレポートによると、シンガポールのインターネット平均ダウンロード速度は世界第9位で、2019年第1四半期~2021年第4四半期にかけて、タイの平均ダウンロード速度は5.7Mbpsから17.4Mbpsまで3倍以上上昇した。オンライン教育はインターネットを基本的なキャリアとするため、東南アジアのユーザーがオンライン教育プラットフォームを広く利用するには、インターネット普及率とネット速度向上が重要な前提条件となる。

2. 東南アジアの保護者と政府は教育を重視 教育支出は増加傾向

東南アジアは各国で教育制度が異なるため、市場が細分化されている。しかし、教育に対する認識や支出には程度の差こそあれ、共通点がある。確実に言えることは、保護者や政府が教育を重視しており、そのことがオンライン教育企業の増加につながっていることだ。

喜んで子供の教育に出費する保護者

東南アジア諸国の経済は、程度の差こそあれ、コロナ流行の初期に大きな影響を受けた。だが、景気の回復に伴って、東南アジアのユーザーの可処分所得は今後も増加すると考えられる。つまり、消費意欲の高まりとともに、親が子供の教育に求めるものが大きくなっていくのだ。学校教育にとどまらず、放課後の補習や語学学習、情操教育などにより多くの時間とお金をかけてるようになる。このような親の教育に対する意識の変化から、様々なオンライン教育企業が誕生している。

東南アジアのオンライン教育プラットフォームSnapaskの創設者であるTimothy Yu氏は、過去5~10年の間に、東南アジアのいくつかの国では、毎世帯の子どもの数が3~4人から1~2人へと「少子化」現象が起きていると2020年に7点5度に語った。この現象は、特に東南アジアの裕福な世帯や中流以上の華人世帯で顕著であり、彼らは子供、特に教育に対して積極的により多くのお金を使う。このような教育にお金を使う意向の強さは、特にシンガポール人ユーザー間で顕著だ。HSBCの教育的価値観に関するレポートによると、シンガポール人保護者の73%は子供が入学する前に教育計画を立て、52%は子供の教育資金のために借金することをいとわない。Geniebookの創設者兼CEO、Neo Zhizhong氏は、シンガポールの平均的な保護者は、子供1人につき毎月約300~400米ドルを教育費に当てていると話す。絵画やピアノなどの趣味への出費を含めると、平均的な教育費は1000ドルを超えている可能性すらある。

同様に、ベトナムの保護者も子供の教育に対する意識が高い。Forge VenturesのパートナーであるTiang Lim Foo氏は、7点5度に対しかつてこのように語った。「ベトナムという新興市場を楽観的に見ています。ベトナムは人口が多く、人口構造が若いし、教育レベルが高い。ホーチミンやハノイに行くと、ミルクティー屋さんより本屋さんの方が多いんです。これは、ベトナム人保護者が文化や教育を大切にしていることの表れだと思います。 家計の可処分所得に占める教育費の割合を見ると、ベトナムの世帯では15%に達しています」 

政府による支援

保護者の教育費負担の意向に加え、政府による教育への財政支援も重要だ。世界銀行とユネスコの最新のデータによると、ASEAN諸国の政府が教育に費やす費用はGDP全体の約2.7%であるのに対し、中国では4%となっている。しかし、東南アジア諸国の経済回復に伴い、政府による教育支援はさらに増加することが予想される。 特に、マレーシア政府はGDPの4.7%相当を教育に費やしており、これは東南アジアで最も高い割合だ。これに続くのがブルネイ、ベトナム、タイで、それぞれGDPの4.4%、4.3%、4.1%を教育費に充てている。

2020年6月、マレーシア教育省は「DELIMa(Digital Education Learning Initiative in Malaysia)」という新しいプラットフォームを立ち上げ、さまざまなeラーニングアプリやリソースを提供することで、学生のオンライン学習に対するニーズに応えた。また、同省は、コロナ流行期に15万台のノートパソコンを配布することを決め、デバイスを入手できないような低所得者層の学生によるオンライン学習を可能にした。マレーシア政府は教育に力を入れていることをアピールしているが、ある調査によると、マレーシアの保護者の73%が、学校で提供される学習教材は不十分だと考えていることがわかった。マレーシアの保護者は、放課後の個別指導、補助教材、マンツーマン指導に年間900ドル以上を費やしている。しかし、これらの授業用教材は適用範囲が広すぎて、生徒のレベル別のニーズに応えられていない。オンライン教育の会社は、マレーシアの教育上の問題点を解決する大きな潜在力を持っていると言える。

3. 東南アジアのオンライン教育市場は細分化されており、多角的に参入可能

東南アジアの巨大な教育市場を前に、オンライン教育企業もK12、語学教育、STEM教育、高等教育、教育ツール/ソリューション、スタッフ教育など、複数の分野に参入している。オンライン教育企業は、ユーザー層によって、Cサイド(個人ユーザー向け)とBサイド(機関·法人ユーザー向け)に分けられる。 また、各トラックやユーザーグループ間のクロスオーバーもあり、多様なオンライン教育の生態系が広がっている。現在、セグメント別で代表的なプレイヤーは以下の通りだ。

1.K12教育:スタートアッププレーヤーが最も多い

K12教育とは、幼稚園から12年生(訳者注:日本の高校3年生相当)までの教育を指し、幼稚園、初等教育、中等教育を合わせた総称だ。

しかし、東南アジアの場合、国によって教育制度が異なる。例えば、インドネシアのK12教育は中国と似ており、小学校(1~6年生)、中学校(7~9年生)、高校(10~12年生)となっている一方、ベトナムのK12教育は、小学校(1~5年生)、中学校(6~9年生)、高校(10~12年生)とインドネシアとは少し異なる。また、シンガポールの教育システムは6年間だ。小学校に入り、その後4~5年間中学校に通う。また、マレーシアの教育制度はシンガポールの教育制度と異なり、6+5+2モデル(小学教育6年、中等教育5年、大学入学前教育2年)を採用している。

市場調査会社Valuates Reportによると、東南アジアのK12オンライン教育市場全体は、2026年までに3億3000万米ドルに達し、2020年以降のCAGRは43.3%と予測する。このような市場展望のもと、K12を対象としたオンライン教育企業が最も多く、競争も激しくなっている。幼稚園から高校まで、東南アジアの親、特に華人の親は、中国人の親と同じように子どもの学力に関心を持っている。そのため、東南アジアの生徒が放課後に家庭教師と学習することも極めて一般的だ。

東南アジアのベンチャーキャピタルInsignia Ventures Partnersは、オンライン教育に関する調査の中で、東南アジアでオンライン教育のトップ企業となるためには、製品がK12の学習サイクルを完全にカバーしなければならないと指摘する。つまり、チェック、キャッチアップ、適応、定着である。中国のオンライン教育企業を例にとると、中国の一起作業は学習ツールや分析ツールなどを提供(第1段階)、作業帮は宿題のソリューションを提供(第2段階)、猿補導は問題集で市場に参入(第3段階)、跟誰学はリアルタイムチューター(第4段階)だ。

東南アジアのオンライン教育市場を再度見てみると、RuangguruとZeniusがインドネシアのK12オンライン教育企業の代表格で、製品は基本的に宿題の解答、問題集、リアルタイムの個人指導を網羅している。2014年に設立されたRuangguruは、オンライン家庭教師モデルに基づいており、学生はオンラインで動画を見たり、模擬試験を受けたり、家庭教師を探し対応する科目を指導してもらい、学力向上、ひいては試験合格につなげることができる。 現在、Ruangguruは2,200万人以上のユーザーを抱えているといい、2004年設立のZeniusは、オフラインの補習からオンライン教育へシフトした。2020年3月から2020年12月にかけて、Zeniusのライブ講座は10倍以上に成長し、2020年のユーザー継続率は90%を超えた。これに加えて、インドネシアではCoLearnがRuangguruやZeniusと競合しており、同じくK12レベルの学生ユーザーを中心に、オンライン·オフラインの補習サービスを提供している。

シンガポールでは、Geniebookが小中学生を対象に、シンガポールのナショナルカリキュラムに基づいた英語、数学、科学のコースを提供している。一般的なK12オンライン教育企業と比べた時のGeniebookの特色は、AIと機械学習を使って学生の学力向上を支援することにある。 このプラットフォームの中核となる3つの機能は、AIを利用して各学生にとって改善余地のある分野を特定し、どの分野でもっと練習が必要かという需要に基づいてカスタマイズした課題を提供する「GenieSmart」、一度に千人以上の学生へライブのオンラインコースを提供する「GenieClass」、教師と学生のためのオンラインディスカッションコミュニティ「GenieAsk」。 また、KoobitやSuperstar Teacherも、シンガポールにおけるK12教育の主要プレイヤーだ。

同様に、ベトナムのK12オンライン教育企業も台頭してきており、Hocmai、Kien Guru、Marathon Education、VUIHOCなどのオンライン教育企業が学習補習の分野に力を入れ、オンライン授業、ビデオ講義、試験問題集などを提供している。

一方、家庭教師版Uberと呼ばれるSnapaskは、香港に拠点を置き、問題集アプローチ+リアルタイムチュータリングを中心に、東南アジアのK12教育市場に進出している。このプラットフォームは、教師と生徒の1対1のQ&Aに重点を置いており、生徒が問題の写真を撮影してアプリにアップすると、瞬時に質問に答える教師とマッチするシステムになっている。

2.言語教育:中国語·英語が中心

東南アジアでは、K12教育·補習に加えて、語学学習のオンライン教育企業も足場を固めており、主に中国語学習と英語学習に分類可能だ。

華人華僑研究所によると、華人華僑の70%は東南アジアにおり、東南アジアの総人口の約6%を占めている。中国人の両親は自分では中国語を話せる人が多いのですが、多忙なため子供の中国語学習が進まない。一方、中国文化の浸透に伴い、海外でも中国語学習者が増えている。2018年までに、世界の中国語学習者は1億8000万人に達し、年14.2%の成長率を維持している。しかし、有資格の中国語教師の95%は中国大陸にいる。その結果、オフラインの中国語教育機関では、量と質の両面で学生のニーズを満たすことができないが、オンラインの中国語教育プラットフォームを使えば、このような課題を効果的に対処することが可能だ。

シンガポールを拠点とする中国語学習プラットフォームLingoAceは、2017年に設立され、6歳~15歳までの海外の中国語学習者にオンラインでマンツーマンの中国語教育を提供している。LingoAceは、東南アジアの消費者の55%が2019年末以降のコロナ流行期に初めてオンライン教育サービスを利用したと指摘する。2020年以降、LingoAceは2000%以上の成長を遂げた。同様の中国語学習プラットフォームとしてはT-Labがあり、米国や東南アジアのユーザー向けにオンライン中国語学習を提供しているほか、中国語学習プラットフォーム「Linnet Chinese」、オンラインバーチャル授業アプリ「T-Lab Live」や教育管理システム「LOOKY LMS」などの製品ラインナップを揃える。

ベトナムでは、英語が最もポピュラーな外国語となっている。1986年のドイモイ以降、英語教育が盛んになったのだ。経済発展に促される形で、英語話者の需要はさらに高まっている。その結果、国民の英語学習を支援するさまざまな英語教育政策が導入され、英語教育·研修会社がより一層成長するようになった。

例えば、Edupiaはベトナムの幅広い学生の英語学習におけるボトルネック解決に注力している。 3年にわたる成長を経て、Edupiaは40万人の有料会員を有し、オンライン英語市場のリーディングブランドとなった。現在は、ヨーロッパ標準英語コース「Babilala」(3~8歳の子供向け)やオンライン家庭教師コースなど、新たなターゲット層向けの自習型英語コースの構築と開発を続けている。また、eJOYは、YouTubeやNetflix、Courseraなどの動画を見ながら、新しい単語を文脈に合わせて表示·収集·理解できる英語学習用Webブラウザープラグインを提供している。2021年末には、全世界で100万人を超えるユーザーを獲得し、毎週40万人近くがeJOYを使って英語を学習している、とする。

これに対し、インドネシアの語学学習プラットフォーム「Cakap」では、中国語、英語、日本語、韓国語などの外国語を、チューターと1対1のビデオ通話で学習できるコースを豊富に用意している。 Cakapは、市場シェアを拡大するために、インドネシアや中国のさまざまな外国語教育機関と戦略的なパートナーシップを結び、質の高いコースを作っていく予定だ。

3.STEM教育:需要拡大中

K12市場をめぐる競争がますます激しくなる昨今、多くのプレーヤーが注目するのがSTEM教育だ。STEMとは、科学、技術、工学、数学を応用し、生徒が探究·協働し、クリティカルシンキングできるよう指導する総合的学習アプローチを指す。STEAMプログラムは、科学的思考と芸術的思考やデザイン思考を統合し、創造力を身につけるための学習活動だ。

国際労働機関(ILO)のデータによると、東南アジアの企業ではSTEM分野の人材に対する需要が高まっている。シンガポールでは約52%の学生がSTEMコースを学んでおり、他のASEAN諸国でSTEMコースを学ぶ学生の比率はおよそ35.8%となっている。実際、2014年からシンガポール教育省は、サイエンスセンターシンガポールと協力して、STEM関連の応用学習プログラムを中学校で実施し、生徒たちが現実世界の問題を創造的に解決できるよう目指している。

近年、シンガポールでは、2020年に設立されたDoyobiやNeobaelなど、STEMに特化した教育企業も続々と登場している。Doyobiは、シンガポール初の子ども向けプログラミングスクールSaturday Kidsからスピンオフした教育企業で、動画やテスト、プロジェクトなどを統合したカリキュラムでSTEM教育を実践している。また、シンガポール政府とGoogleが支援するシンガポール最大の無料プログラミングプログラム「Code in the Community」でも、Doyobiのカリキュラムが採用されている。同様に、Neobaelは小学校向けの統合学習プラットフォームで、学習者の問題解決能力を向上させるSTEMプログラムを提供している。

プログラミングを提供するという点では、K12の生徒を対象としたオンライン教育会社と社会人を対象としたオンライン教育会社の両方がある。例えば、米国のアクセラレーターであるY Combinator傘下のシンガポールのプログラミング会社Strive Mathは、K12の生徒向けに1対1のオンラインコースを提供し、コーディング指導の形で数学を教えている。また、シンガポール版「火花思维」とも言われるAcalytは、南洋理工大学がインキュベートしたオンライン素養教育プラットフォームで、すでにシンガポール教育省からシードラウンドの投資を受けた。このプラットフォームは、国際バカロレア(IB)独自の教授法に基づいており、生徒が知識を広げ、模範的に学ぶ能力を高めることを可能とする。

ベトナムのオンラインプログラミング会社CoderSchool、シンガポールのオンラインプログラミング会社Rocket Academy、タイのプログラミング教育プラットフォームQuestなどは、ユーザーのスキルアップとより良い職探しを目的に、主に成人向けプログラミング教育に取り組んでいる。例えば、Rocket Academyは、業界全体で深刻化しているソフトウェアエンジニアの不足を解消することを目指している。創業者によると、Rocket Academyのプロフェッショナル養成コースは、従来のコーディングブートキャンプよりも長く、包括的でありながら、大学のコースよりも短く、より実践的で、より手頃な価格となっている。同様に、インドネシアのプログラミング会社Hacktiv8は、12週間の集中トレーニングを通じて、初心者をWeb開発者に変身させる。Hacktiv8のブートキャンプでは、JavaScript、Node.js、Vue.jsを数百のハンズオン実験を通して学習します。Hacktiv8のコーディングコースに参加した求職中の卒業生は、通常、卒業から2~3週間で複数のオファーを獲得し、平均給与は1100万ルピア(約776米ドル)となっている。

4.就学前教育:現在プレーヤーは少なめ

就学前教育とは、就学前の子どもを対象とした教育で、家庭と就学前施設(保育園、幼稚園)の両方で行われる。東南アジアでは、就学前教育に焦点を当てたテクノロジー企業は比較的少ない。しかし、東南アジアの経済成長に伴い、保護者が幼児教育を重視するようになり、大きな市場が形成されつつある。

現在、タイのオンライン教育企業であるTaamkru社は、シンガポール、ベトナム、タイの未就学児を対象にゲーミフィケーションによるレッスンを提供している。年齢のもっと低いユーザーに対しては、子どもたちが大好きなゲームとテクノロジーの力を融合させたエンターテインメント化やゲーム化が、オンライン教育企業でよく使われる手法だ。報道によると、15日以上利用した生徒にテストスコア平均26.8%上昇といった効果が現れたとのことだ。

5.高等教育:世界の一流大学との提携コース

K12後の大学レベルの高等教育にも期待が集まり、オンライン教育会社が、世界的に有名な大学と連携して、進学相談、学校出願、コースワーク、キャリアスキルの学習といったサービスを提供するパターンが散見される。

「ジャカルタポスト」紙の報道によると、インドネシア人の66%が就職を学習の主な動機としているが、インドネシアの労働者のうち大卒者は10%未満で、大卒者の多くは低スキルの職業に就いている。このことは、インドネシアにおける高等教育や、卒業生に対する職業教育のあり方を模索する余地があることを示唆している。そして、インドネシアの学生にとって、大学受験の際に最も心配な要素のひとつがコストとなっている。 そのほか、インドネシアの学生の61%が、大学がオンラインコースを提供し学費を低くするよう希望している。

そこでHarukaEduは、インドネシアの現地大学と提携し、オンライン講座やビデオ講義の動画を投稿することにした。ユーザーは空いた時間で、このプラットフォームに登録し自習する。学部や修士課程を終え学位を取得し、より良い仕事につけるのだ。

goKampusは、インドネシアの学生に、大学のコース登録、バーチャル学習コース、奨学金申請、ローン申請などの大学に関するサービスを提供する。goKampusを通じて、学生は成績証明書を写真に撮るでけで大学に申請でき、goKampusのパートナー大学からは即座に承認を得ることが可能だ。

シンガポールでは、Cialfoがケンブリッジ大、オックスフォード大、ペンシルバニア大、シカゴ大、シンガポールマネージメント大学など650大学と提携し、学生の学力プロファイルを分析することで、最も入学しやすい大学をリストアップし、シンガポールの学生が海外の大学で学位を取得する手助けをしている。Skill Unionは南洋理工大学およびレイブンズボーン大学ロンドンなどと協力のもと、認定済みのアクティブ·ラーニング·プログラムを提供している。

6.職業教育:職業スキル強化に重点

職業教育は、卒業生と企業の従業員の両方を対象としている。大学生にとっては、卒業前にスキルアップすることで、より良い仕事に就くことができる。また、企業にとっては、従業員の職業スキルを向上させることは、より多くのビジネスを生み出すことにつながる。

ベトナムでは、Virtual Internshipsが大学生の職業スキルに焦点を当て、大学、K12学校、財団、政府、企業組織と協力して、学生や従業員にスキルアップコース、メンター指導、その他のサービスを提供し、若者の職業用デジタルスキル改善に取り組んでいる。また、同様に大学生の職業スキル向上に注力するインドネシアのオンライン教育会社Binar Academyは、高校生や大学生にデジタル経済に適応するために必要なスキルを教育している。同社はこれまでに、8000人以上の学生を教育し、労働に必要なスキルを提供し、その結果として、昨年の収益が80%増加したと言う。

2018年設立のシンガポールオンライン教育企業ProSparkは、B2B学習管理システムを通じ企業の社員教育やスキルアップを支援しており、Gojek、Kopi Kenangan、PasarPolisなどがクライアントとして名を連ねる。タイのオンライン教育企業Conical社は、従業員がビジネスセンス、データ分析、人材管理などのスキルを学べる「雲大学(訳者注:クラウド大学)」のような学習管理プラットフォームを打ち出している。

7.教育ツール:教育体験向上に重点

あらゆる種類のオンライン教育企業が活況を呈する一方で、プレーヤーの中には、教育を支援するツールやソリューションを提供したり、テクノロジーによる学習体験の向上に重点を置いたK12教育サービスを提供したりするものも現れた。

例えば、前述のシンガポールのオンライン教育企業Geniebookは、学力向上のためにAI技術を活用して生徒の学習プログラムを調整することを重視している。これに類似するのが、シンガポールの教育企業Flying Capeで、独自の診断ツール「SMART」によるオーダーメイドの提案を通じて、子どもたちにとって適切なカリキュラムを見極められるようになっている。さらに、ベトナムとサンフランシスコに拠点を置く語学学習アプリELSAは、独自の音声認識AI技術により、発音の誤りを修正したり、リアルタイムでフィードバックを行ったりし、ユーザーの英語学習を支援する。

テクノロジーで生徒の学習体験を改善させるためだけでなく、学校や教師の教育体験を向上させることに注力しているプレーヤーもいる。インドネシアのオンライン教育企業GREDUは2016年に誕生し、そのプラットフォームは集中管理システムを通じて管理者の文書処理、シラバス作成、授業計画管理、ビッグデータ管理の改善、透明性の向上を支援する。その他、GREDUは管理者、教師、生徒、保護者間のコミュニケーションも促進し、教育全体の体験向上を促している。また、インドネシアのオンライン教育企業Quintal社は、生徒の出席システムから授業料の支払いまで、さまざまな管理関連業務に対応できる学校管理システムのワンストップソリューションを提供する。

8.教育ローン:恵まれない学生の就学支援

東南アジアでは教育に対する需要が高まっているにもかかわらず、高等教育への就学率は決して高くない。東アジアの大学進学率が90%であるのに対し、東南アジアはたったの40%となっている。その主因として、東南アジアの後発国の中に、高等教育分野への資金が著しく不足している国があることが挙げられる。伝統的な融資が使えず、十分な教育資金もないため、多くの学生が学業を辞めざるを得ない状況になっている。同時に、コロナ禍は親の失業危機を加速させ、その多くが高等教育の費用を捻出できない状況に陥った。

その結果、教育与信に特化した企業が生まれた。例えば、インドネシアの教育ローン会社Pintekはは、2750以上の教育機関と100以上の教育零細·中小企業、そして学生65万人以上に奉仕している。また、インドネシアのキャンパスローンCicilは利用者に少額融資を行い、これらのローンは学費支払いや学校設備購入のために使われる。そのほか、シンガポールの教育ローン会社ErudiFiは、経済的に恵まれない学生でも質の高い教育を受けられるよう「先に学び、後で支払う」モデルを開発し、インドネシアとフィリピン市場にもそれぞれDanacitaとBukasというブランド名で事業を展開している。

4東南アジアのオンライン教育エコシステムはまだ黎明期であり、大きな成長の可能性を秘めている

東南アジアの様々な教育分野でオンライン教育企業が誕生しているが、ベンチャーキャピタルのエコシステム全体はまだ十分に成熟しておらず、起業家や投資家にとってはさらなる成長の余地が残されている。

企業の発展段階について、Google、Temasek、Bainによるレポート「東南アジアインターネット経済2021」は、東南アジアのオンライン教育企業の多くが初期段階(シードからシリーズB)にあると指摘している。

T-Lab、Geniebook、eJOY、Edupia、Binar Academy、Skills Unionなど、前出のオンライン教育企業のほとんどは、初期段階にある。Zenius、Koobits、XSeed、Topicaなどは10年の歴史を持つスタートアップで、その成長ポテンシャルを示し続けているところもある。
資金調達について、「東南アジアインターネット経済レポート2021」は、2018年~2021年上半期に調達した資金のうち、初期段階のオンライン教育企業が43%を占めたとの記述がある。ただ、オンライン教育企業の平均的な資金調達規模は小さく、シードラウンドでおよそ80万ドル、シリーズAでおよそ320万ドル、シリーズBでおよそ550万ドルとされる。中には目立った大型資金調達もある。例えば、中国語教育に力を入れるシンガポールのLingoAceは2021年に1億6000万ドルもの資金調達を実現した。

国別分布では、オンライン教育企業は主にシンガポール、インドネシア、ベトナムの市場に集中している。7点5度による2021年のオンライン教育企業に関する不完全な統計(下表)によると、融資の約38%がシンガポール企業で、インドネシアとベトナムが共に約28%を占める。

投資家のアングルから見ると、米国資本、中国資本、東南アジアの地元資本が、東南アジアのオンライン教育企業への投資に大きな関心を示している。Tiger Global、GGV Capital、GSV Ventures、Northstar、Sequoia Capital、Shunwei Capital、East Ventures、Insignia Ventures Partnersが、この分野で比較的積極的な投資家だ。 Shunwei Capitalのほか、アリババグループのeWTP Tech Innovation Fundが、シンガポール法人Redefine Capital Fundを通じて、ベトナムのオンライン教育企業Edupiaに投資しており、これも中国資本による東南アジアのオンライン教育分野への間接投資だ。

また、EduSpazeは、シンガポール初、東南アジア初の地域オンライン教育アクセラレーターで、
シンガポール企業庁支援のもと、2019年11月に正式運用を開始した。EduSpazeが投資した会社には、シンガポールの没入型学習スタートアップ企業ACKT Technologies、インドネシアのオンライン教育企業Binar Academy、シンガポールのオンライン教育企業Flying Capeなどがある。

東南アジアのオンライン教育企業も、資本調達を経て、多くの企業がより一層の成長を遂げている。2021年には、インドネシアのオンライン家庭教師プラットフォームRuangguruが、米国の投資会社Tiger Global Management主導で新たに5500万USドルの資金調達を受け、GGV Capitalがそれに続いた。現在、Ruangguruは東南アジアで2200万人以上のユーザーを抱える。すべての製品カテゴリーでネットプロモータースコア(NPS、訳者注:顧客ロイヤルティを測る指標)の伸びが最高となり、それにより収益を数倍に伸ばし、初の黒字決算を達成した。一方、オンライン教育プラットフォームSnapaskは、2020年にシリーズBで3500万米ドルを調達した。シンガポールのAsia Partnersと韓国のIntervestが主導し、中国の活水資本が続いた。

Snapask創業者のTimothy Yu氏は、2020年3月に7点5度に対して、同社の純利益は15~20%であり、東南アジア市場への参入から黒字化までに3~4年かかったと明かしていた。収益について、同氏は「早く市場に参入することで、早く利益を上げるチャンスを掴むことができる」とタイミングの重要さを訴えていた。 例えばマレーシアでは、Snapaskが早くから参入していたため、競合他社が少なく、Snapaskはより早く収益化を達成することができた。また、学生数は少ないが世帯収入が多いシンガポールでも、比較的早くから黒字化することができた。

しかし、Google、Temasek、Bainによる「東南アジアインターネット経済2021」レポートは、、東南アジアのオンライン教育は健全な成長の可能性を示しているものの、オンライン教育企業の規模拡大への道筋が不透明なため、多くの投資家が「様子見」の姿勢を取っているとも指摘する。現時点では、東南アジアの大きな人口市場と旺盛な教育需要にもかかわらず、オンライン教育のユニコーンはまだ存在せず、プレーヤーは引き続き努力していく必要がありそうだ。

東南アジアのオンライン教育企業が規模を拡大するには、大きく分けて2つの道があることがわかる。1つは、教育コンテンツの規模化だ。つまりK12からSTEAM教育、そして高等教育や従業員教育などへ拡大することだ。もう1つは教育市場の規模化だ。自国から東南アジア諸国、そして世界市場へ拡大することだ。ただ、東南アジアは国ごとに教育制度が異なるなど、市場が細分化されており、すべてのモデルをそのまま「コピペ」できるわけではないのが痛いところだ。

東南アジアのオンライン教育企業は、規模の拡大に加え、イノベーションのペースを加速させる必要がある。中国のオンライン教育企業はAI技術の活用で非常に競争力があるが、東南アジアの企業の多くはまだキャッチアップの段階にある。同時に、東南アジアのオンライン教育プレイヤーの多くは、中国の同業他社から学び、いくつかのソリューションを東南アジア市場に適用しようとしている。例えば、東南アジアで好評を博している「1対多数」のライブ授業などが好例だ。シンガポールでは、特にプログラミングやコンピュータサイエンスに関連するコースは、さらなる革新的なソリューションを打ち出しより競争力を高めていく必要がある。

5. 支払い、ネットワーク、教師は依然として痛点であり、東南アジアの教育は早急なイノベーションが必要

このほかにも、東南アジアのオンライン教育が抱える課題は多い。東南アジアのオンライン教育市場に参入しようとするプレイヤーは、以下のような潜在的問題点を認識しておく必要がある。

まず、東南アジアの後発地域においては、オンライン教育企業がより下位の市場へ進出する際に、支払い能力が低いことが大きな障害となっている。例えば、インドネシアの34州のうち2021年の最低賃金の引き上げを決定したのは5州のみで、21州では最低月給が200米ドルを下回っている。ベトナム政府は、経済成長の著しい同国のインフレ対策として、過去数年、最低賃金の引き上げを実施した。同国は4つの地域で異なる最低賃金を設定しており、ハノイやホーチミンに代表される第1区の最低月給でも181米ドルに過ぎず、フィリピンの1日の最低賃金も地域によって異なり、2021年の最低賃金は6.57~11.17米ドルにとどまっている。

こうした低所得者層では、教育への追加支出は多くの家庭にとって負担となり、中にはオンライン教育プラットフォームに接続可能なデバイスすら持っていない家庭もある。シンガポールに拠点を置くオンライン教育企業Akadasiaの共同設立者兼CEO、Neelesh Bhatia氏は、オンライン教育はオンライン機器に依存しているが、低·中所得国ではインターネットにアクセスできるのは5世帯に1世帯、ラジオやテレビにアクセスできるのは2世帯に1世帯にすぎないと指摘する。

第2に、東南アジアの僻地では、ネット速度もユーザーのオンライン教育利用を阻む大きな要因となっている。企業イノベーションプラットフォームのPlug and Play APACが発表した市場調査レポートによると、インターネット接続が不十分であったり、コンピュータが利用できなかったりするために、インドネシアではコンピュータを使って宿題をする学生は34%しかいないとのことだ。また、世界的な通信事業者アナリスト企業であるOpenSignalが2021年に発表したレポートによると、2021年第4四半期のインターネットの平均ダウンロード速度で、マレーシアは世界61位から70位に転落した。東南アジアの国ごとのネット速度の違いや、都市部と農村部のネット速度の違いは、オンライン教育企業の発展にある程度の影響を及ぼすことになりそうだ。

第3に、東南アジアの農村部では、教師の不足が多くの学齢人口が質の高い教育を受ける上で妨げとなっている。しかも、教師のデジタルスキル不足が教育の質に影響を与えることもある。シンガポールの「ビジネスタイムズ」紙によると、東南アジアの一部の国では、いまだに1人の教師が5年生の全てもしくはほとんど全ての科目を教えているとのことだ。

オンライン教育企業の出現で、教師不足の解消に一定の効果が期待され、テクノロジーを駆使した授業の効率化や利用者の増加が予想される一方で、オンライン教育企業自身が、十分な訓練を受けた質の高い教師を採用し、会社の成長を支えていく必要がある。

世界の私立インターナショナルスクール82校を対象にしたグローバル調査では、トップスクールでさえ、コロナ流行期のオンライン教育への対応が十分でなかったことが判明した。 調査によると、41.5%の学校が、教育テクノロジーを活用したリモート教育の提供に際して大きな課題に直面したと回答している。 例えば、ベトナムのインターナショナルスクールGreen Shootsでは、生徒が学習機器を利用できない、教師が教材を提供するための技術を持ち合わせていないといった問題が発生した。オンライン教育企業の今後の発展計画では、優秀な教師の採用·育成が鍵になってきそうだ。

オンライン教育企業の中には、ネット接続環境の改善や、廉価なスマホで動く授業用ソフトの開発など、これらの課題に対する解決策を模索しているところもある。例えば、インドネシアのオンライン教育会社Zeniusやインドのオンライン教育会社BYJUはオフライン製品を販売し、ネットに接続しなくても、自宅からオンライン教育プラットフォームにアクセスできるようにしている。ネットメディアEntrackrの報道によると、BYJUの2019年の収益の9割は、SDカード内蔵タブレットの販売によるもので、多くの学校が大量購入したことが大きかった。

ネットにアクセスする機器が不足しているという問題を解決するため、公益団体も行動を起こし始めた。シンガポールの慈善団体Engineering Goodは、中古ノートパソコンを回収·改修し、オンライン学習が必要な学生、海外の大切な人と連絡を取る必要がある大人、オンライン作業が必要な人など、必要としている層へ配布している。2021年10月現在、Engineering Goodは5000台以上のノートパソコンを配布済みだ。同団体は、ネット対応デバイスに対するユーザーの需要に応えるため、月平均150~200台のペースでノートパソコンを配布している。

テクノロジーの導入という点では、東南アジアのオンライン教育はまだ黎明期であり、AI、機械学習、APIなどには大きなチャンスがある。教育企業のテクノロジーの進歩は、人口増加に伴うコストや教育効率といった問題の解決に貢献し、学生の知識スキルや職業スキルを引き上げることで、さらなる経済の活性化が期待される。さらに重要なことは、ビジネスのライフサイクルの観点から、東南アジアにおけるオンライン教育は、複数の勝者が存在しえる大規模かつ多様な産業であるということだ。どの企業がこれから主役として登場してくるのかはまだ予断を許さない。

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