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感情的な組織ではモチベーションは悪になる

モチベーションは生きる上で必要なエネルギーである。モチベーションなしに「行動」を起こすことは難しい。だから、人は日々、刺激や感情からモチベーションを高めたり、維持しようする。

モチベーションの意味

まずは、モチベーションという言葉の意味を整理する。

モチベーションとは「やる気」「意欲」「動機」などの意味で用いられる表現である。行動を起こす契機となる刺激や意欲、といった意味合いが主といえる。
※実用日本語表現辞典
「動機づけ」と訳されます。人間の行動を喚起し、方向づけ、統合する内的要因を動機といい、モチベーションは、その動機の状態になることを促す心理的エネルギーを表す概念です。
※人事労務用語辞典
モチベーションとは、人が一定の方向や目標に向かって行動し、それを維持する働きを意味し、「動機づけ」「やる気」とも呼ばれ、人間の行動がいかにして始動し・方向づけられ・維持され・停止していくのか、そしてこれらが進行する過程でどのような反応が人間有機体の内部に生起するのか、を説明するために考えられた概念である。
※人材マネジメント用語集

「行動」するに際してモチベーションは重要であることが理解できる。さらに、どこに向かうかという「方向」づけにも役に立つようである。

モチベーションへの『問い』

モチベーションという言葉の意味はなんとなく理解できる。仕事をしていると日常的に使う言葉でもあるから感覚的にわかる人は多い。

でも、『モチベーションの本質』を本当に理解できているだろうか。

「なぜ行動するにおいてモチベーションが必要なのか?」
「人はどのようにモチベーションを得ているのか?」
「そもそもモチベーションの正体って何なのか?」

という問いに対して、答えが言える人はおそらく少ない。僕も考えるまでは答えが出なかった。

モチベーションの本質

そもそもモチベーションは「手段」なのか?「結果」なのか?もう少し噛み砕いて、仕事の成果で考えてみる。

●「モチベーションがあったから成果が出たのか?」(もしくは、「モチベーションがなかったから成果が出なかったのか?」)
●「いい成果が出たからモチベーションが上がったのか?」(もしくは、「悪い成果だったからモチベーションが上がらなかったのか?」)

この2つにモチベーションの本質がある。

結論から言おう。
前者は大きな間違いだと僕は思っている。これを『非合理的』と定義する。モチベーションがあろうが、なかろうが成果には関係ない。モチベーションがない人間でも、与えられた仕事や計画された仕事を100%完璧にこなせば成果は出る(であろう)。

つまり、モチベーションを「手段」として「成果」を正当化する人は非合理的なのだ。そもそもモチベーションという目に見えない、数値化できない曖昧なものから目に見える、数値化できる成果を紐付けること自体がナンセンス。

一方、後者は正しいと僕は思っている。これは『合理的』と定義する。良い成果、つまり目に見える結果であることで、それが刺激となり、感情にプラスの効果をもたらす。結果の理由が明確であれば、それ以上何もいうことはない。ただし、全員が良い結果になればモチベーションが上がる、という意味ではない。

その本質は、モチベーションが理由で結果につながるのではなく、モチベーションの有無は関係なしに結果が先にある、ということ。モチベーションは「結果」の後に発生する可能性があるもの、合理的なものなのだ。

良いモチベーションの定義

冒頭に申し上げた通り、モチベーションは生きる上で必要なエネルギーであり、これは論理的というより感覚的である。その上で、モチベーションの本質を定義した。

その前提でいくと、さらに上位のモチベーション、『良いモチベーション』を得るためには何が必要か?という問いがある。
これも結論から言おう、2つある。

①合理的に判断し物事を実行すること
②理解と納得を合理的に得ること

である。というよりこれしかない。あとの理由は何を並べても「非合理」になるであろうと思う。例えば、

「この施策をやれば●●(=成果)が期待できます。なぜなら×××(=論理的根拠)だからです。」

という提案に対して、答える返答は、
「OK」もしくは「NO」。つまり「やる」か「やらない」かの2択のみ。(そもそも、その論理的根拠が間違っているという初歩的なミスはここでは考慮しない。)

その上で、それ以外の答えを出したとしたら、それは非合理で感情的な答えと言えるだろう。なぜなら、結果など「やらなければ誰もわからない」、ただそれだけの話だからだ。

そこで、「本当に成果は出るのか?」「成果が出なかったらどうするんだ?」などと、やる前に「誰もわからない答え」を求めたところで時間が過ぎるだけ。ビジネスにおいてこのロスは致命傷である。 (失敗をしたことは考えても仕方はないが、その後の仮説は立てておくことはもちろんできるし、そこは無駄ではない。とはいえ、まずは目の前のOKに集中することが大事。)

合理的に判断できる根拠を集めたら合理的に判断するだけ。根拠を理解してもらい、合理的に納得してもらう。そこに好き嫌いなどの感情的なものは一切いらないのだ。

それで実行された結果の先にあるモチベーションが『良いモチベーション』だ。その結果が良い結果だったとしても、悪い結果だったとしてもだ。
なぜなら、合理的な判断をしたため一切の感情がないから。結果にだけ目が向けられるので、結果という「事実」のみをみて、次どうするべきかをまた論理的に、合理的に考え実行するだけである。

非合理的な人の思考

この定義に対して否定的になる人は、その時点で感情的であり、その感情が非合理な判断をしてしまう、最もやってはいけない行動の選択につながる可能性が高い。挙句の果てに、結果が出ないことをモチベーションのせいにするという責任転嫁まで到る。

非合理な人の思考は、非合理なプロセス(計画、意思決定、実行など)を生んでいる。プロセスの結果が悪ければ、モチベーションの責任、感情や言い訳をする負のスパイラルにはまる

仕事の成果で例えた理由は、「経営」「組織」「チーム」「プロジェクト」「施策」「マネジメント」など仕事におけるシーンで、上記の現象が現実に起こっているから。多くの組織が非合理なプロセス、無理無駄な仕事をしている。それは感情的であるからだ。モチベーションの本質を履き違えているのだ。

モチベーションを持って仕事していない部下に対してイライラしている、それを感情的になって部下に伝えている、上司やマネジャーの方々は特に一度見直しをおすすめする。

「部下のモチベーションが・・・」とか言う時間があるなら、まず自分が合理的な仕事をするためには何が必要か?を考えて、実行してほしい。

非合理なプロセスに原因がある。自分自身を疑ってみることから。